梨のタルトと保険医
アルバ様の言っていたペラさんの大好物【梨のお菓子】
その言葉をつぶやきながら学校内にある売店へと向かった。
すると、そこにはちょうど梨のタルトが販売されていた。
私はそれをワンピース購入して、駆け足で医務室へと向かった。
医務室にたどり着いて、扉の前で一息ついてから扉をノックした。
すると扉の向こうから「どうぞー」と聞き覚えのない女性の声が聞こえた。
その後、すぐに扉を開いて医務室へと入った。
すると、そこには机で書類にペンを走らせている人がいた。
さわやかで清潔感あふれる短髪黒髪に眼鏡。
そして白衣を着たその人は明らかに医務室の先生である様に見えた。
「どこか具合でも悪いのかぁい?」
そう言うと、女性はかけている眼鏡をはずしながら私を見つめてきた。
すると、彼女は驚いた様子で目を見開き、立ち上がって歩み寄ってきた。
「あらあら、あなた傷だらけじゃないの、一体何をしたらそうなるのぉ?」
女性は私の体をじろじろと見つめながらそう言った。
そして「すぐに治療してあげるからねぇ」といそいそと動き始めた。
だが、私は今それどころではなかった。
「あ、あのちょっと待ってくださいっ」
「おや、何か?」
私の声に彼女は振り返って再び私を見つめてきた。
「いえ、その、ペラ・クアトロさんがこちらで治療を受けていたと聞いたのですが」
「ん、あぁ、彼女ならもう出ていった。普通ならまだベッドの上のはずだけど、彼女はなかなかに丈夫で優秀な魔女見習いだ」
「そうですか、では失礼しました」
そうしてすぐに医務室を後にしようとした。
だが、女性が私を引き留めてきた。
「コラコラ、簡単な治療くらい受けていきなさい」
「いえ、このくらいは平気ですし、それに今すぐにでも会いに行かないといけないので」
そうして私は医務室を後にしようとした。
だが、私は引き留められた。
それも、今度は体をがっちりとつかまれて物理的に止められた。
「あの、急いでいるので」
「それは分かった。でも、あなたの探している魔女見習いがどこに向かったかわかるの?」
「あ、それは・・・・・・」
「あなたが随分と必死なのはわかったわ、治療は彼女に会ってからでも構わないわよ」
「はい、すみません」
「ペラ・クアトロは、ここに来てから知り合いの魔女見習い達と楽しそうに話し込んでいたけど、いきなり真面目な顔して出て行ったわ」
「あの、ペラさんはどこに行かれたのでしょう?」
「女子寮の一年生棟だと言っていた」
「女子寮ですねわかりました。ありがとうございます」
「はぁい、ちなみに私はこの医務室で保険医をやってる【ヤクシマ】よ、よろしくねぇ」
「はい、ありがとうございましたヤクシマ先生」
そうして、ヤクシマ先生からの情報を頼りに女子寮へと向かった。
入学式以来となる女子寮への来訪に若干緊張しつつ。
一年生棟へと向かっていると、ふと、二人の人影が見えた。
それはまるで女子寮の裏側に向かおうとしている雰囲気に見えた。
そして、そのうちの一人がとてもきれいな銀髪をしていることに気づいた。
背格好から見てもペラさんに違いない。
そう思い、その人影二つを追いかけることにした。
女子寮の裏側、人の気配がなくひっそりとした場所へとたどり着いた。
そこには、ペラさんともう一人見覚えがある様な女子の魔女見習いがいた。
二人は互いに見つめあっていたが、ペラさんが突然彼女に詰め寄った。
その様子は一見怖い印象を受けるものにも見えた。
だが、少し視点を変えればどこか魅力的で華やかな様子でもある。
しかし、見ている限り二人の様子は前者に当てはまる様にみえた。
そんな様子に、私は恐るおそる二人に歩み寄った。
「あ、あのぉ・・・・・・」
私の気配に気づいた二人は同時に私を見つめてきた。
ペラさんは驚いた様子で見つめてきており。
もう一人の魔女見習いは私を見るなりプイっと顔をそらした。
「か、カイア、あなたどうして?」
ペラさんは、すぐにこわばらせていた顔を柔らかくさせた。
そして、私に歩み寄ると抱きしめてきた。
ポカポカと体と心が温まる抱擁に身を任せつつ。
私は自分のすべきことを思い出して彼女から離れた。
「あ、あのっ、すみません」
「え、どうかしたのカイア?」
私はすかさず彼女の前で頭を下げた。
「ごめんなさい、私のせいでペラさんが大変な目にあってしまいましたっ」
「ちょっと、何を言っているの、あなたのせいじゃないわよ」
「しかし、私がしっかりしていれば、この様な事にはなりませんでした。本当にすみませんでした」
私は頭を下げて誠心誠意謝罪をした。




