安心とこれから
師匠は驚いた表情を見せながら私たちの様子をじっくりと見た。
その後、満面の笑みを見せながら口を開いた。
「やぁ二人とも、随分とひどい目にあったみたいだな」
師匠の姿と言葉に安心した。
そして、私はとたんに全身の力が抜けてしまった。
「し、師匠ぉ・・・・・・」
私はその場で座り込んだ。
そして、体中の筋肉たちが悲鳴を上げ始めた気がした。
ピクピクとわずかに痙攣しているものから。
ガチガチに硬直しているものまで。
私は大切な体に無理をさせてしまった事を小さな声で謝った。
だが、そこまでして得た結果に対し、後悔はしていなかった。
むしろ、無事にここまで戻ってこられた事。
そしてアルバ様が無事であるという事が本当に幸せでしかなかった。
おまけに目の前にはキラキラと輝く師匠の姿がある。
そんな彼は、私の元までやってくると目の前でしゃがんだ。
そして、おもむろに私の頭をポンポンと撫でてきた。
「そんなに大きなものを背負って大変だったろう」
「いえ、これが私の使命ですから」
そう言うと、師匠はどこか満足げな表情で微笑んだ。
師匠の笑顔に癒されていると、アルバ様が私の背後に歩み寄った。
そして、私が背負っている卵のベルトを外す様子を見せた。
その様子に、思わずアルバ様に声をかけようとした。
だが、アルバ様はそれを制止する様に「黙ってろ」と私に言ってきた。
そして、アルバ様は私ではなく師匠に話しかけた。
「リードさん、いいですか?」
「お、どうした?」
「この卵を運ぶと誓ったのはここにいる彼女です、俺は彼女の意思を尊重しました」
「あぁ、ありがとうアルバ、この行いで君は俺からの厚い信頼を勝ち取ったぞ」
リードさんは不敵な笑みを浮かべながらガッツポーズを見せた。
「・・・・・・いえ、俺はまだまだ未熟です」
アルバ様はどこか浮かない返事をした。
そして、私の持っていた卵を軽々と持ち上げて扉を通り抜けた。
そんな背中を見つめていると、師匠が手を差し伸べてきた。
「さぁ、こんなところで座っていたら危ない、こっちへ」
私は師匠の手を掴み、彼の力を借りて再び立ち上がった。
卵を背負っていないおかげで、軽く立ち上がることが出来た。
そうして、私もアルバ様に続いて扉を通り抜けた。
師匠はその後、地下庭園の扉を施錠した。
そして、あらゆる場所の安全を確認する様子を見せていた。
その様子は、ヤグルマ先生の時とは比べ物にならない程、慎重だった。
それにして、問題は持って帰ってきた卵をどうするかだ。
本来ならば、ヤグルマ先生に尋ねるべきだろう。
しかし、アルバ様曰く、これは私を貶める為だけのものだと言っていた。
個人的に先生に対する嫌悪感やいら立ちは感じてはいない。
だが、私が心配なのはペラさんとこの卵だけだ。
早くペラさんのもとへと謝罪に行きたいという気持ちと。
この卵や課題をこなせていない事によるモヤモヤが脳内で渦巻いている。
そんな事を考えながら、目の前で話し込むアルバ様と師匠の姿を見た。
二人は真剣に何かを話し込んでおり、その様子はどこか知的に見えた。
理想的な男性二人による会話、一体どんな話をしているのだろう?
そんな事を思っていると、アルバ様が師匠に一礼をした。
どうやら二人は、話し合いが終わった様子らしい。
そして、師匠が私のもとへとやってきた。
「すまないな大角さん、アルバから全部聞いたよ。本当に大変だったね」
「いえ、アルバ様がいなければ私は今頃どうなっていたかわかりませんから」
「・・・・・・あぁ、そうかもな」
師匠の否定しない言葉の重みが強くのしかかってきた。
それと同時に、アルバ様への感謝の気持ちが大きくあふれてきた。
そんな中、私はギシギシと軋む足を必死に動かしてアルバ様のもとへと向かった。




