這いよる植物
大烏の襲来。
それは大きな鳴き声とすさまじい羽音で恐怖感を煽ってきた。
私とアルバ様は息をひそめながら木陰に隠れた。
しかし、大烏のものと思われる羽音や鳴き声は徐々に遠ざかっていった。
その様子にアルバ様が安心した様子で声を上げた。
「どうやらバレていなさそうだな」
「そ、そうみたいですね」
「いいかお前は一歩も動くなよ、おそらくあの烏はこの辺をくまなく観察しているに違いない」
「わかりました」
「いいか、お前が動くときは奴がこのエリアをひとしきりチェックした後だ」
そうして、私達は息をひそめながら大烏の様子を見ることにした。
その状況の中、私は背負っている卵をゆっくりとおろした。
すると、まるで体が浮き上がるかのように軽くなった。
なんだか不思議な感覚だ。
それでも疲労がたまっているのか、思わず座り込んでしまった。
すると、アルバ様がわずかに私に目を向けてきた。
「だから言っただろう」
アルバ様は、私の選択に対して納得できていない様子で声をかけてきた。
一見厳しい様にも見えたが、それでも自分で決めた事だ。
それに、今のアルバ様の言葉には、どこか棘が無い様に思えた。
どうしてそんな風に思えたのか。
きっと、入学と共にアルバ様からの叱咤を受け続けてきたからだろう。
嫌な気持ちだが、アルバ様のわずかな違いに気づけたのは嬉しかった。
そんな事を思っていると、彼は「少し様子を見てくる」と言った。
しかし、少し歩いた所でアルバ様はその場で立ち尽くした。
その様子を不思議に思いながら私は辺りを見渡した。
すると、私達は奇妙な植物たちに囲まれているのに気づいた。
それは、ベリル屋敷の裏庭にある女神像付近の蠢くアザミに酷似していた。
だが、私に知るアザミとは花弁の色が違うように見えた。
そう、それは月明かりに照らされ青白く光っているように見えた。
すると、アルバ様もこの異変に気が付いたのか。
動揺した様子でキョロキョロと辺りを見渡し始めた。
「なんだこの異様な植物と気配は、こんなものここに来た時にいたか?」
アルバ様は一歩二歩とこの異変を確かめようとした。
すると、数歩進んだところでアルバ様の足元で音が鳴り響いた。
【パキッ】
それは、まるで小枝を踏み折った様な音だった。
すると、私達を囲む植物たちはザワザワとにじり寄ってきた。
アルバ様は危機を察知したのか動きを止めた。
すると、植物たちも動きを止めた。
この様子はまるで女神像の周りにあるアザミと同じ性質に思えた。
私はすぐさまアルバ様にその事を伝えるべく彼のもとへと向かおうとした。
しかし、アルバ様は即座に私の動きに反応してと大きな声を張り上げた。
「馬鹿野郎、動くなって言っただろっ」
アルバ様は大きな声を上げた。
その行為が現状においてどれほど危険な行為であるか。
それを知っていた私は即座に【ナギ】の呪文を唱えた。
そして、アルバ様のもとへと駆け出した。
もちろん、周りにいる植物たちはアルバ様にもにじり寄っている。
何としてもアルバ様のもとへといち早くたどり着きたい。
その一心で必死に体を動かして彼のもとへと向かった。
だが、そのあと一歩といったところで私は躓いた。
そして、アルバ様に体当たりするかのようにぶつかり、そのまま押し倒すかの様に二人そろって地面へと倒れこんでしまった。




