決意と不気味な声
アルバ様が召喚魔法に対して嫌悪感を抱いていることはしていた。
しかし、こうして面と向かって言われるのは心身に良くない。
「す、すみません」
「謝って済む話じゃない、それに、これはお前のためじゃない、リードさんのためだ」
「え?」
「お前を守るように、と、リードさんに頼まれた。ベリル屋敷に住まう同胞のためならば力の限りを尽くせとな」
なんだか徐々に状況が飲み込めてきた。
どうやら師匠が私なんかのために気を利かせてくれたらしい。
そして、そのためにアルバ様は来てくれた。
この場所この状況において一人では無いというのは本当に心強い。
そして、孤独に固執していた自分を強く恥じた。
どこまでも、陰気でどうしようもない自分を嫌になりながら。
今は、アルバ様の手を借りて何とかこの課題をクリアすることに集中した。
そして、背中に背負う卵を担ぎなおし、森の中を進む事にした。
しかしその直後、アルバ様が話しかけてきた。
「おい」
「え、何でしょうか?」
「そいつを下ろせ、俺が背負う」
アルバ様は、私の背負う卵を指さしながらそう言った。
「いえ、しかし、これは私の課題なので」
「こうなった以上、俺とお前は一心同体だ、この課題を効率良く済ませるためにやるべき事はしっかりと決めるべきだ、素直に協力しろ」
アルバ様の言葉に私は戸惑った。
おそらく、彼の言葉に首を縦に振れば良いだけだのはずだ。
しかし、私の心と体は彼の言葉に拒否感を持っていた。
それによって、アルバ様の提案にすぐに反応する事が出来なかった。
すると、アルバ様は少しイラついた様子見せた。
そして「早く卵を寄越せ」と言いながら迫って来た。
その様子に、私はアルバ様から距離をとった。
すると、アルバ様はわずかに驚いた様子を見せた。
だが、すぐに不機嫌な様子を見せた。
「おい、どういうつもりだ」
「こ、これは私の課題です、私がやらなければなりません」
「何言ってんだお前、この課題はあの【ヤグルマ】とかいう教師がお前を貶めるために始めた事だぞっ」
「それでも、これを自分でこなさなければ会わせる顔がありません」
そうだ、私が犯した過ちを罪を自分自身で償わなければならない。
そうでなければ、私はペラさんに顔向けができない。
「いいから寄越せっ、お前のわがままに付き合っている暇はない、命がかかってるんだぞ」
「渡しませんし、私はお前ではありません、大角カイアです」
普段からイライラなんてする事は少ない。
だが、この瞬間だけは尊敬するアルバさんとの会話に苛立ちを感じた。
そして、思わずそんな言葉を発してしまった。
私は思わず我に返り、アルバ様の顔を見た。
彼は眉をひそめて、しんけんなまなざしで私に歩み寄って来た。
「お、お断りしますっ、これは私の仕事なんですっ」
私は決意を言葉にした。
すると、その直後、すさまじい鳴き声が聞こえてきた。
【グエェェェェェェッ】
奇妙な鳴き声は、天空から舞い降りてくるかの様にまんべんなく。
そして、確実に恐怖心を煽る様に聞こえてきた。
「まずいっ!!」
アルバ様は空を見上げ、緊迫した表情で私を見つめてきた。
すると、唐突に私の手をつかんで走り出した。
あまりに突然の行為に驚きながらも、なんとか体を動かした。
アルバ様と共に走っていると、上空からバサバサという音が聞こえた。
そして、すさまじい羽音が聞こえ始めた。
さらに、あたりの木々がザワザワと騒ぎ始めた。
もしかするとアルバ様のいう大烏の仕業なのかもしれない。
私は、興味本位で空を見上げた。
しかし、そこには何も見えなかった。
ただ、どういうわけかあたりが騒がしい。
さらに、先ほどまで感じていなかった風も感じ始めた。
ザワザワ、そよそよとランダムに起こり始める現象。
その数々を肌で感じながら走っていると、アルバ様が私の手を強く引いた。
そして、近くにあった大木の陰に私達は身を隠した。




