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禁忌を犯せし魔女見習いは、愛しの王子と幸せになりたい。  作者: しゃこじろー


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ベリル屋敷の流儀

「ロ、ロイさんどうしてあなたがここにっ、あなたには関係ないのですよっ」


 ヤグルマ先生はどこか慌てた様子でそんな声を上げていた。

 そして、アルバ様の名前が聞こえてきた事に驚き、すぐさま振り返った。


 すると、そこにはアルバ様の姿があった。


 どうして彼がいるのだろう?

 なんて事を考えながら、アルバ様の凛々しい姿に見惚れた。

 すると、アルバ様がヤグルマ先生に話しかけた。


「実は、ある人から、出来損ないの魔女見習いに罰があると聞いたので」

「まさか、それを見物しに来たとでも言うのですか?」

「まぁ、それもそうなんですが、同胞が困っていたら手を差し伸べるのがベリル屋敷の流儀だと教わりましたから。それを実行しに来ました」

「どういう意味ですかロイさん」

「ヤグルマ先生、見た所その出来損ないには荷が重いように見えます、俺にも手伝わせてくれませんか」


 アルバ様は私を指さす仕草を見せながらそういった。

 すると、ヤグルマ先生は私とアルバ様を遮るかのように間に割って入った。


「いえいえ、ロイさんが手伝うようなことではないのですよ、これは大角さんへの課題なのです」

「えぇ、だから、そいつがより良い魔女見習いになるために、手を差し伸べに来たんです」

「何を言ってるんですかロイさん、これはあなたには関係のないことですよ」

「心配しないでください、こいつを連れてすぐに済ませます。何なら厳しい指導で二度と先生の授業の迷惑にならないようにして見せます。俺も今日の授業でこいつには腹が立ちましたからね」


 アルバ様はそう言いながら私の方へと歩み寄ってきていた。

 しかし、そんな様子にヤグルマ先生が焦った様子でアルバ様に駆け寄った。


「ちょっと待ってくださいロイさんっ!!」

「何ですかヤグルマ先生?」

「あ、あなたの正義感は素晴らしい。まだ、入学したての魔女見習いとは思えないほどの勇敢さです」

「ありがとうございます、それよりもあいつの課題をさっさと終わらせましょう」

「ですがロイさん、駄目なものはだめです」

「どういう事ですか?」

「いいですかロイさん、これは警告です、彼女に差し出そうとしている手を引きなさい」

 

 ヤグルマ先生は突然に声色を低くした。

 その瞬間にそれまでの騒がしい空気が一瞬で凍り付いた。

 そして、アルバ様もそれを感じ取ったのか、間をおいてから口を開いた。


「警告というのはよくわかりませんが、俺は何かいけない事をしてますか?」

「これは大角さんに与えられた課題です、あなたは関係ありません、黙ってこの場から去りなさい」

「ですだ、俺にはあいつが課題をクリアすることもできず、無様に野垂れ死ぬのが目に見えます、そうなったら責任を取るのは先生ですよ?」

「そうなったときには私が責任を取りますし、そんな事になるわけないじゃないですか、これは大角さんでも簡単にこなせる比較的に安易な課題です」

「それは、本気で言ってるんですか?」

「と、当然です、さぁもういいでしょうロイさん、あなたの正義感は存分にわかりました。加えてあなたが彼女を導けるほどの力があることもわかっています。

 しかし、これは彼女に与えられた課題なのです、彼女のためにも邪魔しないであげてもらえませんか」


 互いに譲らない様子の二人はじっとにらみ合った。

 その後、アルバ様がゆっくりと口を開いた。


「随分と意思がお強いんですねヤグルマ先生」

「当然です、意志の強さは魔女としての器量に直結します、先生である私が意志の弱い存在であるわけがありません」

「そうですか、なら、俺が何をするかも当然わかりますよね」


 そう言うと、アルバ様は私の元へと歩いてきた。

 そして、私の事をじっと見つめた後にヤグルマ先生の方へ向きなおした。


「何をするつもりですか、ロイさん」

「俺は、こいつを手助けに来ました。この決意が揺らぐことはありません」


 アルバ様は私に背を向けながらそう言って見せた。

 その背中はとても大きく輝いて見えた。

 そんな、彼の素敵な背中に見惚れているとヤグルマ先生はため息を吐いた。


「私は先生です、魔女見習いに然るべき指導を行うのが仕事。しかし、それ以上にこの学校を守る守護者でもあります。

 この学校に害をもたらす彼女はこの学校にいてはならない、そう、校長先生が何と言おうと、彼女はこの魔法界に存在してはならない。だから、例え名家のご子息が邪魔をしてきたとしても、容赦はしません」


 ヤグルマ先生はぶつぶつと呟きながら私たちの元へと歩み寄って来た。

 彼女は、冷たい目つきで私を横目に大きな木の扉のへと向かった。

 そして、先生は両手でその扉を開いて見せた。

 すると、開いたと同時に生ぬるい風が流れ込んできた。


「ひっ」


 思わず、声を上げてしまう程の不気味な風。

 それは、足元から全身にまとわりついてくるような気味の悪いものだった。

 そんな、奇妙な感覚を感じていると、扉の先が見えた。

 そこは、うっそうとした森の様な場所が待ち構えていた。


「さぁ課題を始めましょう、大角さんはとっとと大烏の卵を背負って森を進むのです。心配ありませんよ、その卵を巣において来れば良いのですから」


 ヤグルマ先生の言葉にアルバ様は驚いた様子で先生を見た。

 そして、かすかに笑って見せた。

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