疎外感
「杖道というのは身体能力を高めるための訓練よ、魔女は魔法だけ使えればいいってものじゃないの。体を鍛える事で魔法の質も高める事が出来るという研究結果も出ているのよ」
「体を使うのですか・・・・・・」
私が思っていた魔女とは少しズレが生じた。
だが、逆にその違和感こそが魔女という存在をさらに引き立たせてくれた。
「自分の体くらいある棒を振り回すの、これで生意気な男どもを打ち倒すのはとても気持ちの良いのよ」
笑顔で物騒な事を言った彼女はどこか嬉しそうだった。
それは杖道の技術に関する自信があるからなのか。
あるいは、男性をなぎ倒すのが楽しいのか。
どっちかはわからないが、彼女はとても生き生きとしている様に見えた。
「なんだか物騒で少し怖いですね」
「そう思えるのならカイアは大丈夫ね」
「どういう意味でしょうか?」
「それはね・・・・・・」
ペラさんの返事にドキドキしていると、再び私の名前が室内に響き渡った。
そして、今度は私のすぐ近くまで来たヤグルマ先生が私を見下ろしていた。
「大角さん、あなたという人は本当に」
その先の言葉を言われないだけましなのだろう。
とにかく、先生は怒りを我慢した様子で私を見つめていた。
その様子にすかさず謝罪をした。
すると、ヤグルマ先生は不満げな様子でため息を吐いた。
そしれ「集中するように」と一言残して教壇に戻っていった。
その後は、ただただ授業に集中した。
そうして波乱の錬金術の授業も終わり。
周囲は次の授業のための移動を始めていた。
そんな中、私も次の場所へと向かおうとしていた。
すると、丁度私たちの周りに人が集まってきていた。
それらは、おそらく同じ新人魔女見習いだ。
しかし、名前もわからない人達ばかりだった。
どれもが女子ばかりであり、彼女たちはペラさんを取り囲んでいた。
「ペラさん、次の授業一緒に受けてくれませんか?」
女子集団のうちの一人がそう言った。
すると、周りの人たちも同様にペラさんにすり寄った。
その様子は彼女の優秀さを証明するかのような光景に見えた。
何より、彼女たちの目には隣にいる私は映っていないように見えた。
ペラさんは、彼女たちの依頼に困惑した様子で対応していた。
そして、私はその様子をわずかに眺めた後、静かにその場を離れた。
そうして講義室を抜けて学内の廊下を歩きながら私はふと思った。
思えば今日の授業もペラさんの方から一緒に受けようと誘ってくれた。
ただ、それだけだ。
これまでは、きっとあの女子たちと受けていたのだろう。
アルバ様だってたくさんの人に囲まれていた。
そう、たまたま同じベリル屋敷のよしみというだけ。
本質的には私なんかとは違う世界の住人なのだ。
そう思うと、改めて自分の立ち位置や住む世界を認識できた。
そして、気づくと私は一人で立ち尽くしていた。
思わずあたりを見渡すと、あちこちで交流を深める魔女見習い達が見えた。
それらは、様々な感情を用いてコミュニケーションをしており。
その様子は、とても社交的で人間味あふれる様子に見えた。
それに引き換え、私は一人で立ち尽くし人間の様子を観察している。
周囲では、私を不思議そうに見つめる集団もいた。
その視線はどこか、警戒した様子でぎらついている。
しかし、そんな状況でも私は落ち着いていた。
その理由は多分、一人でいる方が楽である事を知ってしまったからだ。
勿論、誰かといる事は楽しくて充実している。
しかし、私という人間の根底には孤独を望んでいるのかもしれない。
これはきっと、長年の経験で染みついた癖だ。
しかし、この普遍的な日常の望みを疑問にも感じている。
なぜなら、せっかくこんな素晴らしい所に来たのに。
私はまだ、孤独を望んでいるのが果たして正しいのだろうかと。
ともかく、明日の錬金術の授業は一人でしっかり集中して受けよう。
その方がペラさんにも迷惑をかけないし、私も授業に集中できるだろう。




