秘密の・・・・・・
これが才能の差なのかもしれない。
そんな、勝手に解釈しながら地面を見つめた。
「すみませんリードさん、私にはよくわかりません」
「あくまでも俺の個人の感想だ。ただ、この場所は、かつて交流を持っていた世界との懸け橋となっていた可能性がある」
リードさんの言っている話がうまく理解できなかった。
しかし、言葉だけ理解するならば。
それはまるでこの下に今いる場所とは違う世界が存在していて。
しかも、その場所を交流していたかのような発言だった。
「その世界というのは一体どのようなものなのですか?」
「【異界・モンス】かつて地上の魔女たちと交友関係にあったとされた世界だ」
「初めて聞く名前です。伝説の場所かなにかですか?」
「モンスはおとぎ話じゃない、実在するはずだ」
「あの、モンスとは一体どのような所なのですか?」
「はっきりとは言えないな」
リードさんは少し悔しそうに言った、しかし彼の顔は微笑んでいた。
「そうなんですね」
「あぁ、だが聞いた話によると、モンスには地上では見たことのない動物や植物がいる、とても素晴らしい所だそうだ」
ただでさえ、魅力的な魔法学校という場所。
そして、それと同等以上のモンスという場所に惹かれてしまった。
「だが、今となってはもう行くことも、誰かがその事について話す事もない」
「それは、なぜですか?」
「モンスについての情報は意図的といってても過言ではない程に隠されている。そして、俺たちのような若い世代がそれを知り得るのは難しい事なのかもしれない」
何もかもがわからない。
しかし、だからこそリードさんは何かがあるかもしれない。
そんな、希望的観測を持ったのだろう。
そして私も彼に触発されていた。
「なんだか、リードさんの話に私も興味が湧いてきました」
私の一言にリードさんはにやりと微笑みながら顔を向けてきた。
「そうか、わずかな知識をひけらかした甲斐があったな」
リードさんは「へへっ」と恥ずかし気に笑って見せた。
「私も、キンやモンスについて調べてみたいです」
「そうか、じゃあそんな大角さんに一つアドバイスだ」
「はい」
「調べるのはもちろんだが、そこにスパイスを加えるのが肝だ。これは魔女としての器量にもかかわってくるから覚えておくといい」
「スパイスというのはどういう事ですか?」
「とりあえずはイメージが大切としておこう、魔女にとって想像力というものは非常に重要なものだ」
「想像力・・・・・・」
小さなころから想像する事は日常茶飯事だった。
寝る前なんかは特に想像力があふれ出していた。
気づけば寝ていることが多かったが。
そのせいか摩訶不思議な夢を見ることも多く。
私の心をいつも癒してくれていた。
まさか、そんな現実逃避とも思える行為。
それが魔女として必要なことだったとは、夢にも思わなかった。
「原初の魔女と呼ばれる俺たちの祖先は、釜に想像力を投げ入れてはかき混ぜ、現在における大いなる魔法の基礎を作り出したともいわれている。
現代の魔女はもちろん、魔女見習いの誰もがこの意識を学ぶが、この基礎的な部分についつい目をそらしがちだ。
しかし、魔法界におけるマスター達は皆、口をそろえて想像力について深く語る。
それは間違いなくそこに魔女としての真理が秘められているからに違いないと思っている」
リードさんの熱心な言葉を私は一言も逃すことなく耳に入れた。
それは、頭の中がパンクしそうな程の情報量に思えた。
だが、頭だけではなく心にもその言葉をしまい込んでみると。
意外とすんなり収まってくれたような気がした。
「その言葉をしっかりと頭と心に留めておきます」
「あぁ、大角さんがいい返事をしてくれて俺はうれしいよ」
こんな私に対しても魔女とは何かと教えてくださるリードさん。
この人は本当に優しい方だ。
いうなれば私にとって身近な先生。
いや師匠ともいうべき人なのかもしれない。
「ちなみにですが師匠、他にどんな事を知っているのですか?」
「・・・・・・ん、師匠?」
リードさんはきょとんとした顔で見つめてきた。
と、同時に私は思っていることがつい口に出てしまっていた事を恥じた。
そうして押し黙っているとリードさんは大笑いし始めた。
私は必死に無礼な言葉を訂正しようと訴えかけてみた。
だが、彼は聞く耳を持ってくれなかった。
「悪くない、今日から俺は君の師匠になろう」
「し、失言です、聞き流してください」
「いや、困ったことがあったら俺に聞きに来るといい、教えられることは教えよう」
「あ、あのこれは違うんです、心の声が漏れ出てしまって」
「何が違うんだ、別に俺は構わないぞ?」
「し、失礼ではありませんか?」
「構うものか、君は俺の初めての弟子だ」
「よ、よろしいのですか?」
「あぁ、でも二人の時だけだな。大角さんにも色々と迷惑がかかるだろうから」
リードさんはそう言って、優しく微笑んできた。
「私は大丈夫ですが、リードさんは?」
「構わない、それよりもさっきの質問だが、この場所の事を知っているのは校長先生とアーモンド先生と俺の三人だ、そして君が四人目だ」
「学校の先生方もここの事は知らないのですか?」
「ベリル屋敷周辺は一応校長先生の管轄だから限られた人以外は立ち入らないことになっている。だから、本館の先生たちもほとんどここには来ない」
とても貴重な場所に訪れた私は急に緊張感が増してきた。
しかしそんな緊張もつかの間、師匠が腕時計を気にする様子を見せた。
そして「長居は禁物だ」と言い、私たちはそそくさとこの場を後にした。




