地下からの気配
「すごいな、君は」
リードさんは、ため息交じりに呟いた。
「い、いえ、私一人の力ではありませんので」
「いや、君は間違いなく、普通の者とは違う道を歩んでいる」
「へ?」
まるで何かを悟ったかの様子で見つめてくるリードさん。
彼はは「ついてきて」と言うと女神像の背後へと回っていった。
その姿を見た後、私はネックレスに向かって「ありがとう」とつぶやいた。
すると、スーは「お役に立てて光栄だ」と言った。
とても頼もしい言葉だった。
だが、それと同時に自らの非力さを痛感した。
そんな事を思いながら女神像の後ろへと回った。
すると、そこではリードさんが待ち構えていた。
彼は、女神像の土台となる部分に目を向けていた。
そして、リードさんは女神像の土台部分に体をくっつけた。
それはまるでこの女神像を動かそうとしているようだった。
すると、女神像全体が徐々に動き始めた。
ゴロゴロと音を立てながら動く女神像を押しながら気づいた。
すると、足元に階段のようなものがある事に気づいた。
そして、リードさんがその階段を下ろうとしていた。
「さぁ、早く降りてしまおう、この像は自動的に元の位置に戻る様になっている。挟まれないように気を付けて」
リードさんの言葉に従いながら、身をかがめて階段をおりた。
薄暗い階段を恐るおそる降りていくと、徐々に光を感じ始めた。
それはオレンジ色の温かみを感じる優しい光だった。
そうして、光で照らされた場所にたどり着いた。
すると、そこに広がっていたのは広い空間と数多くの武器や防具だった。
「すごい、どうしてこんなものがここにあるのですか?」
「聞いた話によると、ここはこの国における古代の戦士たちの拠点となっていたらしい」
「つまり、これは本当の武器という事ですか?」
「どれも実戦のための本物だろう、見た所使用された形跡もあった」
どうやらリードさんはここに幾度も足を運んだことのある様子だった。
しかし、どうしてこんな所に案内されたのかがわからなかった。
明らかに私とは遠い世界が広がっており。
どことなく恐怖すら感じ取れた。
「あのぉ、リードさんはどうして私をこのような場所に連れてきたのでしょうか?」
「今日からここが拠点となるんだ、許可も取ってある」
「拠点?ここで一体何をするんですか?」
「個人的なことを言えば歴史を解き明かすといった感じかな?」
「歴史というと、魔法界の歴史という事ですか」
「あぁ、でも校長先生とアーモンド先生は違う目的があるらしい」
「違う目的ですか?」
「実は校長先生はこの魔法学校ができる前に、この場所を世界一の忍者学校にするつもりだったんだ」
突拍子もない言葉に頭が困惑した。
忍者というのは、あの黒装束で手裏剣を投げるあの忍者?
「忍者?」
「まぁ、そうは言ったものの賛同者がいなかった事と、この学校の創設者である二人によって却下されたらしい」
「忍者だなんて、大昔の話だと思っていました」
「そうだ、俺も忍者は創作物の一つだと思っていた。だが、ここにきてその価値観はひっくり返った。これらのモノは間違いなくかつて栄えた時代の遺物だ」
目の前の光景とリードさんから発せられる言葉。
それはあまりに衝撃的であり、常識という概念が壊れた様に感じた。
「ちなみにだが、俺の見立てではここよりもさらに下があると踏んでいる」
「さらに下があるのですか?」
「あぁ、これより下が存在するという」
「ですが、下に行けるような場所は見当たらないような気がしますが」
見渡してみても扉やさらに地下へと続くような場所は見つけられなかった。
「俺もこの場所をくまなく調べさせてもらったが、悔しいにどこにも下につながるような場所は見当たらなかった」
「では、どうして更に下があると思われたのですか?」
「感じないか、この底から湧き上がってくるような圧倒的な気配を」
リードさんは大まじめな顔をしながらそう答えた。
その様子はまるで、これより下の階層があると確信している様だった。
しかし、私にその湧き上がってくる気配を感じ取ることができずにいた。
むしろ、どこか心地の良いような感覚の方が強かった。




