表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁忌を犯せし魔女見習いは、愛しの王子と幸せになりたい。  作者: しゃこじろー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/69

不思議な音

「そうだ、大角さんの言う通りここに咲くアザミは動くっ」


 思わぬ正解に驚いたが、それ以上にアザミの事が気になった。


「あの、本当なんですか?」

「まぁ、具体的には音に反応する性質を持っているという事だ」

「音?」

「よし、少し試してみようか」


 そう言うとリードさんは両手を広げ、そして勢いよく拍手をした。

 すると「パンッ」という心地よい音が鳴り響いた。

 そして、それと共に辺りがザワザワとし始めた。


 それは風による草花のざわめきに近いものに思えた。

 だが、どうじに何かが這い寄って来るかのような音にも思えた。

 そして、その音へと目を向けてみた。

 すると、下段に咲くアザミの花が私たちの方へと密集しながら蠢いていた。


「ひっ」


 思わず情けない声を上げてしまった。


「大丈夫だ大角さん、アザミたちの行動範囲は決まっている」

「そうなんですか?」

「あぁ、花壇を縁取るレンガの外には出られないようになっているのさ」


 確かに、レンガで縁取られた所からアザミが出てくる事は無かった。

 しかし、迫りくるアザミたちはとても恐ろしく見えた。


「これはどういう事なんですか?」

「仕組みは分からない。だが、この魔法学校が建立された時からこのアザミはここにあるらしい。

 だから俺も初めて見たときは驚いた。だが、生態を知ればこれほど可愛く頼もしい花はいないものさ」

「生態というのは、先ほど言っていた音で反応するという事ですか?」

「そうだ、もしも知らずにこの花壇に踏み入ろうものなら、その者はこのアザミに刺し殺されるだろうね」


 恐ろしい言葉が聞こえてきた。


「え・・・・・・刺し殺す?」

「と、いうのは冗談だが」

「じょ、冗談なんですね」

「あぁ、だが、聞いた話だとここのアザミに襲われると三日三晩寝込んで熱と痛みに苦しむことになるらしい」

「お、恐ろしいですね」

「あぁ、知らないと怖いが、知っていればちゃんと対処できるものだ」


 そう言うと、リードさんは何かをボソボソとつぶやき始めた。

 一体何が起こるのだろうかと不思議に思って彼を見つめた。

 すると、リードさんが微笑みながら私に何かを語り掛けてきた。


 しかし、その言葉は聞こえなかった。

 私は、その言葉を聞き取るために彼に歩み寄ろうとした。

 しかし、彼はまるで「待った」と言わんばかりに手を突き出してきた。


 すると、リードさんはアザミが咲き乱れる花壇へと足を踏み入れ始めた。


 一体何をするつもりなのだろう。

 そう思い、ドキドキしながら彼の姿を見つめた。

 すると、不思議な事に彼の足元にあるアザミが奇妙な動きを見せた。

 それはまるで、リードさんの為に道を開けるかの様に移動し始めたのだ。


 音に反応している姿とは真逆に思える現象。

 そして、開かれていく女神の像への道筋。

 リードさんは、ついに待ち合わせ場所の女神像の元へとたどり着いていた。


「ジャジャーン」


 リードさんは両手を広げながらお茶目に奇声を発した。

 その様子に思わず笑いがこぼれた。

 しかい、それ以上に私は彼の不思議な力に興味津々になった。


「あのリードさん、一体どうやったんですか?」

「それは秘密だ」

「えぇ?」

「・・・・・・と、言いたいところだが君には伝授すべきだろうな」


 からかうリードさんにもやもやした。

 しかし、同時に私の胸は期待でがいっぱいになった。


「もしかして魔法ですか?」

「その質問にはうまく答えられない、だが、俺がつぶやいた言葉を覚えてるかな?」


 私はついさっきまでの出来事を振り返った。

 そして、リードさんがアザミに向かう前の言葉を思い出した。

 それはとても短く簡単な言葉だった。


「はい、覚えています」

「それを口に出して唱えてみてくれ、呪文が成功すれば、君は新たな世界に足を踏み入れられる」


 ワクワクするような台詞に心惹かれた。

 そして、私は『その言葉』を口にすることにした。


「・・・・・・ナギ」


 その言葉と共に、ゆっくりとアザミの花壇へと歩み寄った。

 だが、アザミたちは私の足音に反応する様に這い寄って来た。


 その様子からわかるのは失敗の証。

 私は魔法の呪文を唱えることに失敗してしまったようだ。

 ただただ自分の無能さを実感していると、胸元から声が聞こえてきた。


 それは間違いなくスーの声だった。

 胸にかけてあるネックレスから直接語り掛けてきている。

 相変わらず心が落ち着く声をしているスーは、優しく語りかけてきた。


「カイア、聞こえているかなカイア?」

「はい、聞こえていますっ」

「カイア、今の君ではの呪文を唱えることは難しい、私が手を貸そう」

「え?」

「少しばかり私の力を君に貸そう、そうすれば今の君でも呪文が少し扱える様になる。それから、呪文を『言葉』ではなく『音』と意識してみることだ。

 君が今やろうとしている事はコミュニケーションを取るためのものではなく、超自然的な領域と同化する事だ」


 そう言い終わると、スーはそれ以上喋らなくなった。

 するとその直後に私はなんだか全身に力がみなぎる高揚感を感じた。

 それは、まるで今なら何でも出来てしまいそうなほどのものだった。


 もしかするとこれがスーの手助けなのかもしれない。


 そう思いながらリードさんに教わった【ナギ】という呪文を【音】という意識を持って唱えてみた。


 呪文を唱えた後、体感的には何の変化も感じられなかった。

 だが、リードさんはどこか驚いた様子で私に向かって手招きしていた。

 彼の様子を見るにどうやら呪文が成功しているらしい。


 私は高揚する体と心を落ち着けた。

 そしてアザミの花畑へと足を踏み入れた。

 すると、アザミたちは私の足先から逃げるように道を開いてくれた。


 その様子はとても感動的だった。

 だが、同時にアザミたちが逃げていくのが、心なしかさみしく思えた。

 そんな事を思いながら一歩二歩と大地を踏みしめてた。


 そうしていると、私はいつの間にかリードさんの元へとたどり着いていた。

 その状況に、ホッと一息吐きながら見上げた。

 すると、そこには目を丸くするリードさんの姿があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ