アザミの花
「あとは、ベリル屋敷の先輩が揃っているいうのは君達にとって良い環境だと思うよ」
あたりを見渡してみると、確かに見覚えのある顔があった。
その中には、私達に手を振ってきている人の姿も見られた。
これなら私も多少は許容してもらえるかもしれない。
そんな事を思いながら私以外の三人の様子を見てみた。
すると、彼らもこの場所に好感を持っている様子が見られた。
「まぁ、どこの属性も立派な魔女を目指すという気持ちは変わらない。だから、君達が居心地の良いと思う所に行けばいい。
ただ、個人的な意見として、この風属性で過ごした日々はとても充実していて最高に楽しかったとだけは言っておこう」
この学校で指折りの魔女見習いであるリードさん。
彼は言うのだから間違いないのだろう。
その言葉を聞いて、私はこの場所で勉強してみたくなった。
ここにいればリードさんやアルバ様のようになれるかもしれない
そんな期待を抱いてしまう程にこの場所は心地が良かった。
そうして、私達はリードさんの案内の元で風属性を見学して回った。
それは、これまでの属性見学の中で最も充実しているように思えた。
そして、他の三人もとても楽しそうにしていた。
そんな様子に私まで嬉しくなった。
すると突然、リードさんが私にだけ手招きしているのに気付いた。
ニヤニヤと、まるで悪だくみでもしているかのような姿。
その様子にドキドキしながら彼の元へと向かった。
すると、リードさんはすぐに口を開いた。
「大角さん、もうどの属性に行くか決めたかな?」
「は、はい、風属性に所属したいと思っています」
「そりゃあいいね、じゃあついでに例の件についてはどうだい?」
「例の件というのは?」
「・・・・・・キンについてさ」
リードさんは周囲を見渡しながらヒソヒソと耳打ちしてきた。
「えっと、私にお手伝いできることがあるのであれば、ぜひ協力させていただきたいのですが・・・・・・」
「そうかっ、じゃあ属性見学が終わったら、ベリル屋敷の裏庭にある女神像の所に来てくれっ」
リードさんは、どこか嬉しそうにそう言った。
「ベリル屋敷の裏と言えば、アザミがたくさん咲いている所の事ですか?」
「そうそう、そこに来てくれ頼んだよ」
そうして、私はリードさんと不思議な約束をしてしまった。
その後は、属性見学を楽しみ、最終的に風属性への所属を決めた。
しかも、アルバ様、ペラさん、モモチの三人も風属性の所属を決めていた。
それはとても心強く、どこか安心する結果であり、私は思わず頬が緩んだ。
私の人生の中でも、珍しく順調で快適な一日だ。
そんな、ご機嫌な私はベリル屋敷の裏庭へと足を運んでいた。
ベリル屋敷の裏庭には、あざみ野花が群生する花壇がある。
中央には女神の様な石膏の像が鎮座している。
とても幻想的な場所で、私はリードさんの事を待っていた。
風で揺れるアザミの花を眺めていると、背後から声が聞こえてきた。
「ここのアザミは綺麗だろう?」
リードさんは現れるなり優しい口調でそう言った。
「はい、そうですね」
リードさんの言った通り、裏庭はアザミが見事に咲き乱れている。
それらは、女神像を取り囲むかのように埋め尽くされて綺麗に見えた。
しかし、その花々を見ていると、どこか胸騒ぎを感じた。
その瞬間、目の前のアザミの花が妖しく蠢いている様に見え始めた。
なぜそう思ったのか、理由は分からない。
「うんうん、今日も元気に咲いてるなぁ」
不安な私とは反対に、リードさんはのんきな様子を見せていた。
そんな彼に、私はたまらず質問したくなった。
「あの、リードさん」
「ん、どうかした?」
「ここのアザミって、なんだか変じゃありませんか?」
「ん?どのあたりが変だと思った?」
リードさんはわずかにほほ笑みながらそう尋ねてきた。
それは、まるで私の疑問に対する答えを知っているかのように思えた。
「まるで意思を持って動いているように思えます」
私の言葉にリードさんは目を見開いた。




