歓迎の風
「やぁ、来たな四人とも」
振り返るとベリル屋敷の頭領リードさんがいた。
彼は、ニコニコと笑顔で両手広げて「ようこそ」と言った。
その様子は私たちをとても歓迎してくれているように見えた。
すると、リードさんの登場に真っ先に反応したのはアルバ様だった。
彼はすかさずリードさんに歩み寄った。
「リードさんっ」
「やぁアルバ君、今日の見学はどうだい?」
「リードさん、俺は絶対に風属性に入るって決めていましたっ!!」
「おぉっ、それはいい、ちなみに他の属性には行ってきたのかい?」
「はい、一応すべての属性を見て判断しようと思っていたので全部回ってきました」
「いい心がけだ、じゃあせっかくだからベリル屋敷の馴染みであり、頭領として、俺が案内しようじゃないか」
「いいんですか?」
リードさんの提案にアルバ様は嬉しそうにガッツポーズをした。
そんなアルバ様の様子にどこか愛らしさを感じた。
アルバ様にとってリードさんは絵本に出てくるヒーロー。
そんな感覚を覚えた。
「大切な若い同志のためならば、先輩は一肌脱ぐものだ」
リードさんはローブの裾をめくりあげるながらそう言った。
めくれ上がった袖から見えたのはリードさんの筋肉質な腕だった。
見た目とは裏腹にかなり鍛えているように見えた。
そんなリードさんは、近くに来た案内役の先輩に状況説明をした。
すると、案内役の人は私たちに「楽しんで」と一言残して去っていった。
「よし、まず初めに、風属性の特色は主に主体性と独創性を重んじている。よそとは違って規則とかは少ないな」
「他の属性は規則が多いんですか?」
ペラさんはそう尋ねるとリードさんは苦笑いをした。
「そうだなぁ、厳密にはここの規則が少ないと言った方がいいだろう。理念を重んじるが故に、少し自由すぎるって感じもある場所だ」
「そうですか?私にはとても魅力的に感じますよ」
リードさんは申し訳なさそうな感じでそう言たのとは対照的に、ペラさんはどこか満足気にしていた。
「だが、自由だからこそ辛い部分もあってね、風属性に入ってみたものの、あまりに自由すぎる故に他の属性に移る魔女見習いも少なくない。見ての通り風属性は毎年新入生が少ない事で有名なんだ」
あたりを見渡すと、確かに人が少ないように感じた。
そして、属性というものが、移籍できるものだということに驚いた。
「ですが、風属性出身の魔女は有名な人が多いですよね、それこそ現代魔法における若きカリスマの【ユリウス・ドッペル】さんもそうだと聞いています」
ペラさんは流暢に喋りながらリードさんに質問していた。
彼女もまたアルバ様と同様に風属性に対して好感を抱いているのだろう。
「そうだね、ちなみにここの校長であるマスタージーナも風の出身だよ。あと、忘れてはいけないのは【ロベルト・クーキー】だ。彼の遺した【空の書】は現代の魔法界にもとても強い影響を与えている」
次から次へと知らない名前が飛び出してきた。
おそらく魔法界では有名人なのだろう。
それにしてもあの校長先生がも風属性の出身だったとは。
確かに何者にも囚われない風の様な人だ。
それを考えると、不思議ではないのかもしれない。
そう思いながらケラケラと笑う校長先生の事を思い浮かべた。
「アルバ君のお婆様も風の出身だね」
「はい、婆ちゃんも風属性の出身ですっ」
リードさんの言葉にアルバ様は嬉々として応えた。
私といる時とはまるで違った様子に少しだけ憂鬱になってしまった。
「君はその血をしっかり受け継いでいるようだね」
「はいっ」
アルバ様が喋るたびに、彼の機嫌がとても良いという事が分かった。
あんなにキラキラとした笑顔を前に、私は彼から目を離せなくなった。




