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禁忌を犯せし魔女見習いは、愛しの王子と幸せになりたい。  作者: しゃこじろー


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火踊り

 その人達は、各々に自らの自己紹介と所属する属性を口にしていた。


 どうやら、彼らが属性ごとの先輩らしい。

 状況的に、彼らが希望する属性見学へと案内してくれるらしい。

 そうして、徐々にざわめきだつホール内で思い悩んでいた。

 すると、ペラさんが一番に声を上げた。


「アルバ、あなたどうせ東に行くのでしょう?」

「ふんっ、知った口をきくな、お前に俺の何がわかる」

「あら、あなたの憧れであるリードさんは東にしかいないわよ」


 アルバさんはしばらく沈黙した。

 そして、苦悶を表情を浮かべ始めたのだが、すぐに笑ってみせた。

 だが、その笑顔は見るからにぎこちないものだった。


「ふっ、俺はこう見えても情熱的な男でな、最初に行くのは火属性って決めてたんだよ、全くお前の憶測には呆れたものだなぁ」


 アルバ様は、少し無理をした様子で声を震わせながら口にした。

 すると、そんな彼の様子にペラさんはニヤニヤと笑った。

 そして、私に近寄って耳打ちしてきた。


「見なさいカイア、アルバは嘘がつけない純粋な男なの。その証拠にゆがんだ口角がピクピクと動くでしょう、あれは嘘をついているときの癖よ」

「そ、そうなんですね」


 初めて聞くアルバ様の情報に半ば興奮しながら彼の口元に注目した。

 すると、確かに口角のあたりがピクピクと痙攣していた。


 とても新鮮なアルバ様の情報を脳内に大切にしまい込み。

 アルバ様の一声で火属性の見学へと向かうために南へと向かった。


 本館南に位置する火属性の拠点となる場所に到着した。

 すると、そこは多くのランタンやロウソクが並べられていた。

 たくさんの明かりが揃ったとても幻想的で明るい場所だった。


 火属性を案内してくれる魔女見習いの先輩の人の話によると。

 火属性は常に明るく灯を絶やさない光溢れる属性だと説明した。

 説明通り、薄暗い本館から南に向かうほど明るくなっている気がした。


 火属性と聞いたときは、まるで地獄の様な場所を想像していた。

 しかし、実際に来てみるとかなり癒される空間に思えた。


 そんな事を思いながら歩いていると、徐々に焦げた匂いがしてきた。

 おまけに、体温が上昇しているような気もする。


 何かおかしい。

 そう思いながら歩いていると、すぐにその原因が分かった。


 石造りの大広間、それは黒い煤だらけになっている。

 目に入ってきたのは松明を持った重厚な鎧を着た人達。

 その人たちは皆片手に松明を持っていた。


 おそらく彼らが火属性の先輩だろう。

 一見すれば恐怖しか感じられない姿だった。

 しかし、よく見れば彼らは皆幼い顔立ちで似合わぬ付け髭をつけていた。

 それは何かの仮装大会のようであり、ほほ笑んでいる様に見えた。


 何かの仮装でもしている様子だ。

 そんなちょっと変わった雰囲気に少し安心した。

 しかし、その矢先に彼らから大きな雄たけびが聞こえてきた。

 想像していたものよりも若々しい声だった。

 だが、それでも迫力のある咆哮に驚いた。

 すると、彼らは突然動きを合わせて踊り始めた。


 一体感のある動き、揺れ動く松明の火がとても幻想的だ。

 その様子に思わず見とれてしまった。

 そんな、お祭りでも始まったような状況に周囲は徐々に盛り上がり始めた。


 案内をしてくれている先輩曰く、これが火属性伝統の歓迎行事らしい。

 なんでも、新入生を歓迎するために毎年行われているようだ。

 太鼓や笛の音が鳴り響き、わいわいがやがやとにぎわっている。

 しかし、近くにいたアルバ様が「暑苦しいな」と呟いた。


 思わぬ一言に、ペラさんが私の肩にもたれかかりながら笑いはじめた。

 そんな混沌とした中で、モモチだけは周りの熱気に感化された様子だった。


 個人的にはアルバ様に同感だ。


 確かに魅力的ではあるが、この熱気に耐えられそうに無かった。

 そして、ペラさんもまたうんざりとした様子だった。


「悪くはないけど私には合わないわ、カイアはどうかしら?」


 ペラさんはけだるげにそう言った。


「私も暑いのは苦手です」


 そう言うと近くにいたモモチが「俺は気に入ったけどね」と言った。

 彼は、随分と乗り気で火属性の先輩による踊りを真似ていた。


「悪いわねモモチ、いくら歓迎とはいえここは私の性に合わないわ、あの集団行動だけでも嫌気がさしてくるもの」

「では、水属性なんかどうですか、とても涼しそうで良いと思うのですが」


 あまりの熱気に思わずそんな提案をしてみた。

 すると、ペラさんは笑顔で指をパチンと鳴らした。

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