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禁忌を犯せし魔女見習いは、愛しの王子と幸せになりたい。  作者: しゃこじろー


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キン

 自分でもうんざりするほどのネガティブ思考、せっかくの歓迎会でさえ浮かれる事もできないのは人としてどうかしている。


 そんな事を思っていると、私とは対照的に思えるリードさんが笑顔で口を開いた。


「さて、ここからは次の話題に移りたいんだが、まぁ、せっかくの食事だから飲み食いしながら話そうか」


 そう言うと、リードさんは立ち上がって近くの机に置いてある料理を手当たり次第に持ってこようとしていた。そんな姿に私は即座に席を立ち、彼のお手伝いをすることにした。


「あのリードさん、私も手伝いますっ」

「ありがとう、でも今日は君の歓迎会だ、大人しく座っているのが今日の君のあるべき姿だ」


 瞬時に返される言葉に私は何も言えずに大人しく座った。すると、マロン先輩が話しかけてきた。


「リードさんの言う通りだカイアちゃん、今日ばかりはおとなしくしてればいい、私も歓迎会の時はお人形のように座って色んなものを食い漁ったものさ」

「そうですか・・・・・・」


 言われた通りおとなしく待っていると、リードさんはあらゆる場所から両手いっぱいに料理を持ってきており、その姿はまるで大道芸人の様だった。


 すると、そんなリードさんの隣に、厳しい顔をした女性が歩み寄ってきていた。


 それが、まぎれもなくこの屋敷のもう一人の頭領である【ジェーン・リー】さんであることに気付いた私は自然と姿勢を正した。


「遅いじゃないかジェニー、話し合いをすると言っていただろう」

「別に焦ることもないでしょう、今日の夜は長いのだから」


「まぁな、さぁ座ってくれ、君の大好きな豚のローストもあるぞ」

「べ、別に頼んでないけど」


 二人は他愛もない会話をしながら私たちの元へと来ると、軽く挨拶をしながら席に着いた。大先輩を前にして、私はさらに緊張してきた。特にジェーンさんに関して言えば女子棟を取り仕切る頭領だ。


 つまり、リードさんの対となる存在だ。


 彼女は、時折部屋にやってきて自己管理ができているかを確認しにきたり、学校や屋敷でのマナーを教えてくれたりと、色んな意味で緊張感を持たせてくれる人だ。


 だから、ジェーンさんを前にすると余計に緊張する。


 そして、彼女の見るもの全てを見透かしているかのような切れ長の目もまた私を緊張させる一つの要因となっている。

 なるべく、彼女とは目を合わせないようにするのが緊張を和らげる一つの方法だったりもする。


 そんな事を思いながら緊張感のある五人での会食となった。


「さて、食べながら話すとして、俺がこの場で話したいことは一つ、大角さんの所属についてだ」


 リードさんはモグモグと食べ物をほおばりながら喋り始めた。


 こういう所は少しお茶目というか子どもっぽいというか、第一印象とはかけ離れた人に見えた。

 しかし、そんな事よりも私は【所属】という言葉が気になり思わず質問してみた。


「リードさん、私の所属というのはどういうことですか?」

「四属性を中心とした集団に所属することが学校で決められている。そして君もそのどれかに所属しなければならないという事だ。

 ちなみに【天】と【地】を属性とする者は、適正にかかわらずどこにでも所属することができる。まぁ、この二つの属性を持つ者はめったにいないんだけどな」


 そう言いながらリードさんはアルバ様の方をちらっと見る素振りを見せた。そして、嬉しそうに笑いながらチキンをほおばった。


「でも、私には属性がありません」

「君には属性がない事は知っている、大変な運命に同情するよ、大角さん」


 リードさんは優しげな声と顔でそう語りかけてきた。その言葉に思わず目頭が熱くなった。


「は、はい」

「だが、それはあくまでシチフクが言った事だ。あのフクロウは確かに目が良く才能を見抜くが、感情的でデタラメな所もある、君はその被害者の一人だという事だ」


 リードさんは、まるでシチフクの事を嫌っているかのように苦い顔でそう言って見せた。その様子にどこか親近感を覚えたのと、同時にシチフクの憎たらしい顔が思い起こされた。


「ですが私は、そのシチフクにはっきりと才能がないと言われてしまいました」

「確かに、大角さんからしたらその言葉はショックだっただろう。けれどそれは大した問題ではない」


「どういう事ですか?」

「彼がやっているのはただ適性を見抜いているに過ぎないという事だ。だから、君の才能の有無はともかく、大角さんはこの場所で多くの事を学ぶ事に集中すべきだ」


 リードさんの言葉からは、私に対する強いメッセージが込められているように思え、私は深く頷くとリードさんは嬉しそうに笑った。


「そして、それを踏まえたうえで大角さんに提案がある」

「提案?」


「俺が、いや、この場所だからこそ君にとっておきの属性を授けようと思っている」

「え、私にも属性をいただけるのですか?」

「あぁそうだ、今日から君の属性は(キン)だ」


 その言葉を聞いて真っ先に思い浮かんだのはキラキラと輝く大角家の邸宅の金装飾された家具だった。


「ここ、べリル屋敷にのみ存在する極秘中の極秘属性だ」


 自信満々にそう言ったリードさんに対してジュンさんが鼻で笑いながら口を開いた。


「ふっ、随分と見栄を張った言い方だなリード。それと、入学したばかりの彼女を勘違いさせないで」


 ジェーンさんはハスキーで大人びた声で語ると、リードさんに目を向けた。いや、それは睨んでいるといっても過言ではない程に鋭いものに思えた。


「ジェニー、せっかく貴重なメンバーを勧誘しようとしているのに邪魔をしてくれるな」

「それはこっちのセリフよ、うちの純真無垢な少女を怪しい所に所属させるわけにはいかないわ。話し合いと聞いて来てみれば、お前の趣味に彼女を付き合せるつもりなの?」


「趣味じゃない、それに彼女にはとても良い条件だ。いや彼女には最適な属性なんだ」

「どうだか、そこに所属した所で教鞭をふるってくれる先生も、共に高めあう仲間達もいないでしょう。孤立は彼女にとってあまりよい選択には思えないのだけど?」

「もちろん孤立させるつもりはない、それに先生ならここにいる」


 リードさんはアーモンド先生に目を向けた。すると、先生は照れた様子で乾いた笑いを発した。


「あ、あはは、どうもアーモンド先生です」


 先生は後頭部をポリポリと掻きながら落ち着かない様子でそう言った。すると、そんな先生の様子にジェーンさんは困惑した様子を見せた。


「どういうこと、アーモンド先生の専門属性は水よね、どうしてそうなるのよ」

「それは秘密だジュン、なんたって金は極秘中の極秘、超極秘属性だからねその質問は禁だ」


 リードさんの言葉にあきれた様子でため息をついたジェーンさんは、近くにおいてある金色の液体が入ったグラスに手を伸ばし、それをおいしそうに飲み下していた。


 私はそんな様子を見届けた後、このよくわからない議題に口をはさみたくなった。


「あ、あのリードさん、所でその金というのは一体何なんでしょうか?」

「そうだな、どう説明しようか・・・・・・」

 

 リードさんが困った様子を見せていると、アーモンド先生が幾度か咳ばらいをしながら、私の事をチラチラとみてきた。


「えっと、どうかしましたか先生?」

「カイアさん、金については私が説明出来ますよ」


「先生はご存じなのですか?」

「もちろん専門分野ですからね、リード君よろしいですか?」

「えぇ、ぜひお願いします先生」


 リードさんは深々と頭を下げた。そして、アーモンド先生は咳ばらいを一つすると背筋を伸ばした。


「いいですか、金というのはもともと特別な者にしか持つ事の出来ない属性だったのです。

 しかし、時を経てその金は誰にでも習得可能な比較的安易な【術】であることが判明しました。それによって金という属性は現在の魔法界では【錬金術】と呼ばれ、属性とは別分野の多くの魔女が容易に扱える【術】として浸透することになったんですよ」


 思わず口から「はぇ~」という言葉を吐いてしまい、すぐに口を手でふさぐとアーモンド先生は嬉しそうにニコニコとしていた。


「つまり、金とは魔女が持つ【属性】ではなく【術】だという事が現在の魔法界での常識となっているというわけです」


 わかりやすい説明に納得していると、アーモンド先生は突然顔をしかめて声を張り上げた。


「しかーしっ、実はそんな常識は全くのウソなのですっ!!」


 突然の大声に驚きながら、とても興味をそそられる話に思わず唾をのんだ。何よりも先生の熱心な口ぶりが私をそうさせた。


「錬金術、そんな名ばかりの術は本来存在していた【金】という概念とはまるで違う事に私は気づいたのです。

 錬金術の授業を受けたことがある方はわかると思いますが、あれはかつて存在した【金】という属性とはほぼ関係のない事をやっているのですっ」


 随分と熱心に語るアーモンド先生に対し、リードさんは何やら話の内容を理解した様子でウンウンと頷いた様子を見せながら口を開いた。


「あくまで考察の粋を出ないですがその疑問は俺も同じです、現在の錬金術において、主に学ぶのは無価値とされるものを価値のあるものへと変える術ですからね」


 リードさんはワクワクとした様子でそう言った。その隣では少し冷静な様子のジュンさんは、リードさんを横目に色々と考え込む様子を見せていた。その間にもアーモンド先生はつづけて喋った。


「私は金について深く研究し、あらゆる文献から考察した結果一つの答えにたどり着きました。

 それはかつて金という属性が存在し、それらは何者かの手によってこの世から見事に消し去られたという事です」


 なんだか、とてつもなく壮大な話になってきたところで、ジュンさんが手を挙げて話に割って入ってきた。

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