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禁忌を犯せし魔女見習いは、愛しの王子と幸せになりたい。  作者: しゃこじろー


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謝罪と安堵

「カイアさーん」


 私の名前を呼び、嬉しそうな様子でやってきたのはアーモンド先生であり、彼は迷う事なく私の隣に座って来た。


「いやぁ、今日から私も新入生と一緒にこの屋敷に配属されることになったんですよ」

「え、そうなんですか」


 先生の報告をとても嬉しく感じた。


 どんな理由があろうと私に好意的に接してくれる人がいるという事は本当に喜ばしい事だ。


 そう思っていると、隣にいたマロン先輩が怪訝そうな顔をしていた。


「あれ、どうかしましたか先輩?」

「いや、どうしてアーモンド先生がここに配属されるのかと思ってさ」


 疑問を抱かれていることに何かを感じ取ったのかアーモンド先生は急にあわただしくなった。


「こ、校長先生のお達しですよ、何かおかしいですか?」

「じゃあ、先生がカイアちゃんと親しげなのはどういう理由ですか?」

「それは、私が彼女のお目付け役というか、なんというかですねぇ」


 お目付け役という言い方をされると、そこはかとなく私が悪い事をしたように思える。

 しかし、禁忌を犯した身分だからあながち間違った表現ではないような気がした。


「禁忌を犯せし魔女見習いを監督するためにわざわざ派遣されてきたんですか、先生方も大変ですね」

「え、えぇそうです、大変名誉で重要な役職です」

「でも、その割にはアーモンド先生を選ぶのは妙ですね、こういうのはクロノスケ先生とかが妥当だと思うんですけど。

 ほら、あの人って体中に目がついてるくらい隙の無い人じゃないですか、それに比べてアーモンド先生はその対極なわけですよ・・・・・・まったく不思議ですねぇ」


 マロン先輩の鋭い指摘にアーモンド先生はうろたえていたが、まるで自我を保つかのように胸を張り、腰に手を当てながら踏ん反りかえった。


「なんと言われようともう決まったことです。私はカイアさんにより良い学校生活を送ってもらうために行動するのみです。それに、斑鳩先生なんかに大切なカイアさんを預けられませんよっ」


 どうやら先生は斑鳩先生に相当の苦手意識があるようだ。


 しかし、そんなアーモンド先生のサプライズもあり、少しだけこの歓迎会が楽しくなりそうだと思っていると、丁度その時リードさんが私達の元へとやってきた。


「アーモンド先生話は聞いていますよ、今日からここに配属されるんですよね」

「これはこれはリード君、よろしくお願いしますね」

「もちろん大歓迎ですよ先生」


 そうして、リードさんと先生は互いに挨拶を交わしながら握手をした。その後、リードさんは私の目をじっと見つめてくると、口を開いた。


「さて、大角さんもいることだし、良かったらゆっくりお話でもどうですか、先生も交じってもらえると助かります」

「えぇ、もちろんですリード君」


 そうしてなんだか奇妙な四人で会食することになった私は、少し緊張した様子で背筋を伸ばしていると、私なんかよりもはるかに緊張した様子でいかり肩のマロン先輩が隣にいた。


 その様子に思わず笑いが込み上げてきたが、自分も大差な事から笑いをこらえ、これから始まる会食に覚悟を決めた。


「さて、早速だけど大角さん、君には謝っておこうと思う、申し訳なかった」


 リードさんによる突然の謝罪に困惑していると、彼はは謝罪の言葉と同時に下げていた頭をあげると、わずかにはにかんで見せた。


「いやぁ、禁忌を犯せし魔女見習い。俺が知る限りとんでもない問題児がこのベリル屋敷にやって来たものだから、下調べやらなんやらしてたら今日までかかってしまってさ、本当に君には参ったよ」


 リードさんは頭をポリポリと掻きながらそう言った。その顔は苦笑が含まれており、色眼鏡の向う側にある彼の目元にはクマが出来ているように見えた。


「あのリードさん、一体どういう事でしょうか?」

「まぁ簡単に言うと、君の素性が謎すぎて警戒していたのさ」


「私が、謎ですか?」

「あぁ、でも君の隣にいるクレナータさんが色々教えてくれてね、そのおかげでこっちは安心することができたのさ」


 マロン先輩に目を向けると彼女は眼鏡を曇らせながら「えへえへ」と気味の悪い笑い声をあげていた。


「あとは、ここにいるアーモンド先生と校長先生から直接お話を聞く事ができてね、あれは貴重な時間でした。アーモンド先生の熱心なお言葉が無ければ今日は迎えられていませんでしたよ」


 アーモンド先生はマロン先輩同様に照れた様子で笑っており、二人してリードさんにメロメロになっているように見えた。


「それでリードさん、お話というのは?」

「まずは君に謝りたかったという話だ。君がここに来てから随分と冷たい態度をとってしまったからね」


「いえ、そうなってしまう事を私はしてしまったのですから、皆さんのせいでは無いと思います」

「いや、これは決して許されない事だ、本当にすまなかった大角さん」


 再び頭を下げるリードさんに今度はこっちの方が気まずくなり、すぐに頭を上げるように言うと、彼は遠慮気味に頭を上げた。


「本当は君にもここにいる同胞との時間を過ごしてほしいが、謝罪の件とこれからの事を話しておきたかったから、彼らには我慢してもらう事にした」

「では、もしかすると私も歓迎されていたりするのでしょうか?」

「当前だっ、俺達だって初めから君を仲間外れにしようだなんて思っていない。ただ、君はあまりにも規格外すぎてね、俺たちもまだ未熟だから色々と勘ぐってしまった」


 どうやら私の知らないところで色々な迷惑をかけてしまっていたらしい。


 知らないところで私が迷惑をかけているのはとても情けないものだ。しかし、リードさんの様子を見る限り歓迎されているのは間違いなさそうに思えた。


「なんだか、色々とご迷惑をおかけしたみたいですみませんでした」

「いやいや、君が気にすることじゃない、それに今となっては大角さんはここに必要不可欠な存在であることに違いない、これから仲良くやっていきたいと思っている」


「私もここでの生活には慣れましたし、とても居心地がいいと思っています」

「そうか、その言葉が聞けて良かったよ、これもクレナータさんのおかげだ、本当に感謝しているよ」


 リードさんはやたらとマロン先輩をほめて彼女を見つめていた。


「そ、そんな私は別に何もしてないですよぉ」


 マロン先輩は照れた様子でそう言うと、近くにあったお菓子に手を伸ばしてパクパクとほおばり始めた。その小動物の様な様子を横目に私は安心感を覚えた。


 そして、これまでの話を聞いたうえで私がここにいても良い事に強い安心感を抱いていた。


 入学式からわずかな期間であったけれど、とても孤独に感じた日々がこれからはましになるかともうと思わず肩の力が抜けた。


 つくづく浮き沈みの激しい人生を送っているものだ。


 今後は、もう少しなだらかになってくれると嬉しいのだが、それは無茶な願いなのかもしれない。

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