第4話①
「おはよう、千紘君」
「ああ、おはよう早霧」
千紘の失恋から一週間が過ぎ、千紘と蓮はどちらから言うでもなく、朝蓮の乗る駅まで一緒に登校するようになっていた。
あれ以来、千紘の失恋については触れることはなく、お互いにあった出来事について話したり、今時のトレンドについて話したりと、単なる世間話をするだけだが、千紘は朝寝坊することが無くなった。
それでも、蓮より早く待ち合わせ場所に来れたことは無かった。
「そういえば、千紘君が選んだ花、すごく好評だったよ」
「花?あー、そんなのもあったな」
「つい一週間前のことなんだから忘れないでよ!友達の誕生日に送ったんだけど、すごく喜んでくれてた」
てっきり告白に渡すものだと思っていたが、蓮が女子だと知ってから行方が気になっていたが、どうやら友人の誕生日プレゼントだったらしい。
そして、その友達が喜んだのは、花に対してではないと千紘は心の中で思った。
「次そういう機会があってもまた千紘君の店に行けばいいかな?でも、いつも同じだと手抜きだと思われる?」
頭を抱える蓮だが、多分全部喜ばれるだろうと千紘は思う。
「……早霧って、学校ではどんな感じなんだ?」
「……どんな感じって?」
「いや、学校では王子って呼ばれてるんだろ?でも、今俺と話していると普通の女の子って感じだからさ、ちょっと気になって」
「……別に、このまんまだよ」
蓮は視線を横に逸らし、変な間が空いてから答える。
その何かを隠しているような動きを千紘は見逃さない。
「……ふーん」
しかし、男子禁制の桜河女子高校に行けるはずもないので、ここでは千紘は何も言わなかった。
それに安心したのか、蓮はホッと肩を撫で下ろした。
(いつか絶対に見てやろう)
千紘は心の中で決意を固めた。