表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/70

第28話②

事故から3日、千紘は毎日のように茉白の元に訪れていた。

茉白を庇い、意識不明になっている男性が蓮の叔父だと聞いた。

蓮の事も心配な千紘だが、彼女なら自ら立ち直れると感じていた。



 「千紘、何かあった?」



浮かない顔をしていたせいか、茉白に聞かれる。



 「……いや、なんでもない」



千紘はそう答えるが、茉白には分かった。



 「……ねえ、千紘」


 「なんだよ」


 「これ、見て」



そう言いながら茉白は、自分の横に置いてあった熊のぬいぐるみを手に取る。

それ以外にも、茉白の周りには、花やお菓子などたくさんのお見舞いの品が置いてある。



 「私ね、こんなに色んな人に心配かけちゃった。でもね、ちょっと嬉しいの。こんなにたくさんの人が、友達が、私を心配してくるんだって」



茉白は優しい笑みを浮かべながら、千紘を見る。



 「私は、もう大丈夫。千紘が居なくても、大丈夫だよ」


 

茉白の言いたい事を、千紘はようやく理解する。

けれど、千紘はまだ動けない。

目の前の少女を放っておけない。



 「……あいつは強いから、きっと一人でも─」


 「千紘」



言いかけたところで、茉白は遮って言う。



 「あの子ならじゃなくて、千紘がどうしたいか、それが大切な事だよ」



茉白の言葉に、千紘は目が覚めた気がした。



 「……ごめん茉白、俺行くところ出来た」


 「うん、いってらしゃい」



千紘は、茉白の病室を出て向かう。

蓮の元へと。



 (蓮なら立ち直れるじゃない、今、俺が、あいつの傍にいてやりたいんだ!)



病院を出た千紘は、ただがむしゃらに走った。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



千紘が去った後の病室に、静かな空気が流れる。

窓の外を見ると、2匹の鳥が仲睦まじくじゃれあっている。

その光景を見て、茉白は笑う。

その時、一滴の雫が、茉白の手に落ちる。


 

 「……はは、もう、我慢しなくていいか」



茉白は、ただ泣きじゃくった。

その日、少女の泣き声が、密かに響いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ