第28話①
私の大切な人は、みんな私の前から消えていく。
最初はお父さん、後を追うようにお母さんが、そして、私を引き取り、育ててくれた叔父さんまで。
私が何をしたと言うのだろう。
どうして神様は、こんなに酷い事をするのだろう。
こんな事になるくらいなら、最初から一人にして欲しかった。
誰かと一緒に居られるなんて希望、持ちたくなかった。
最初から一人なら、こんな辛い思い、しなくて済んだのに。
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事故の知らせを聞き、病院に行った日から3日、蓮は部屋の隅でずっと座っていた。
学校にも行かず、ろくな食事も取らず、ただ座っていた。
(……独りだ)
真っ暗な部屋を見渡しても、叔父さんの姿はなく、ただ静寂だけがあった。
病室で、意識不明の叔父の姿を見た蓮は、かつての記憶を思い出す。
幼い日の父の亡骸、涙で滲むことはなく、はっきりと見た母の亡骸、自分の前から家族が消えていく光景、叔父を見て、それが蘇った。
(……そういえば、茉白ちゃんは大丈夫だったかな)
病院に行った時、叔父が助けた女子高生が茉白だと病院の先生から聞かされていた。
蓮は想像する。
心配そうに茉白に駆け寄る千紘を、困難を共に乗り越えている光景を。
「……いいな」
自然と口から出ていた。
想像の中の茉白とは正反対で、蓮は独りだ。
ずっと一緒に居てくれる誰かが居る茉白に、その相手が千紘ということに、強烈に嫉妬する。
「……千紘君」
そう、呟いた時だった。
突然、蓮の家のインターホンが鳴る。
セールスか何かだろうと無視をする蓮だが、音が何度も鳴る。
さすがにしつこいと感じ、蓮はモニターの前まで行く。
「……え?」
その正体を見て、蓮は通話ボタンを押す。
「お、やっと出た」
「千紘、君?」
「なんだ?泣きそうな声して。そんなに俺に会えて嬉しいか?」
モニター越しの千紘は、いつものように笑顔を見せていた。




