第27話①
文化祭が終わってから、私の環境は大きく変わった。
「おはよう!蛍峰さん」
「おはよう!」
登校すれば、みんなが挨拶をしてくれる。
昼休みになれば、みんなと一緒にご飯を食べる。
放課後も、部活がなければ一緒に出かけたりもした。
誰も、私の白い髪をバカにすることも、憐れむこともない。
楽しくて、幸せな日々
千紘が居ない寂しさにも、少しずつ慣れてきた。
学校で千紘を見かけると、楽しそうに笑っている。
それを見るだけで、幸せな気持ちになった。
千紘も、今の私を見て、同じ事を思ってくれていると嬉しい。
今この瞬間、私は間違いなく幸せだった。
けれど、私が幸せになった時、必ず悲しみが襲いかかる。
千紘と出会った日から数日後に、飼っていた犬が死んだ。
順風満帆な学校生活を送っていたら、千紘の気持ちを踏みにじって、傷つけた。
そして、それを乗り越えて、また楽しい日々を過ごしていた時、それは起こった。
なんてことは無い、いつも通りの朝だった。
違った事と言えば、いつもより少し、早めに家を出ただけだ。
7月間近で、太陽が照りつける。
車道の方には、大きなトラックが見えていた。
向かいからは、キッチリとしたスーツを着た男性が歩いている。
そして、それは突然起こった。
車道を走るトラックが、こちらに突っ込んでくる。
突然の事で、私の反応が遅れる。
「危ない!」
スーツを着た男性が、私を助けようと駆け出し、私の肩を押す。
ガシャンッ、と大きな音が鳴る。
「痛っ!」
突き飛ばされた私は、起き上がろうとするけれど、足が上手く動かない。
目の前には、突っ込んできたトラックのドライバーが、青ざめて立っている。
そして、その下には、
「……嘘」
ドライバーの足下は血だらけで、私を助けてくれた男性が、頭から血を流して倒れていた。




