第24話③
文化祭は大成功に終わり、春芝高校の生徒達は、校庭での後夜祭を楽しんでいた。
季節は少し早いが、小さな花火が配られ、教師が監視の元、各々が楽しんでいる。
そんな光景を、少し離れたところから千紘は見つめる。
そして思い出す、心愛の劇でのセリフを。
(俺って、自意識過剰かな……)
そう思うも、千紘には、あの言葉がただの劇のセリフには感じられなかった。
「隣、いい?」
そこに、心愛が話しかけてくる。
千紘は思い出し、鼓動が早くなる。
断るのも不自然なので了承し、心愛は千紘の隣に腰掛ける。
「気づいていると思うけど、あの言葉は本気だから」
「……やっぱそうだよな」
いきなり本題に入り、千紘は気まずい顔をする。
その顔を見て、心愛はクスリと笑う。
「そんな顔しないでよ。ただ伝えたかっただけだから」
心愛の言葉は、まるで千紘の答えが分かっているようだった。
「……実はね、茉白と友達になる前から、鷹辻君の事は知ってたの」
「そうなのか?」
「うん、いつも茉白の事優しい目で見てて、誠実な人なんだろうなって気になってた」
初めて聞く心愛の気持ちに、千紘は申し訳なさと恥ずかしさが込み上げてくる。
「……ねえ、鷹辻君は茉白が好きなんだよね?」
「……ああ、そうだよ」
「なら、茉白の覚悟に、応えてあげるんだよ」
そう言うと、心愛は立ち上がり、千紘の前に立って言う。
「もし、茉白の覚悟に応えるなら、大人しく諦める。でも……」
「でも?」
「でも、もし別の子を選んだら、後悔させてあげる」
「後悔って?」
「こんなにいい女をフッたんだってね」
それだけ言い残し、心愛はクラスメイト達の所へと走って行った。
その背中を見ながら、千紘は思う。
(誠実な人、か。そんなんじゃねえよ。だって、)
心愛に告白された時、劇中でも本音だと分かったあの時、千紘の頭には、2人の少女が浮かんでいた。




