第22話②
「えっと、蓮の事かな?彼氏の噂は─」
「嘘、ですか?」
敦子が言おうとすると、後輩の女の子が、先回りして言う。
「……そこまで言い切りはしないけど、私は聞いてないよ。だから、私に何か聞かれても困るの」
敦子がそう言い切ると、後輩はニヤリと笑い、続ける。
「隠してるだけかもしれませんよ?」
「え?」
「本当は彼氏が出来たけど、恥ずかしくて隠してるだけ。可能性が0とは言えないですよね?」
「ま、まあ、そうだけど……」
後輩の妙な雰囲気に、敦子は少し腰が引ける。
「垣根先輩、この件、私に任せてくれませんか?」
「任せるって、何を?」
「桜河女子の王子に、彼氏が出来たのか、ですよ」
後輩は、敦子の返答を待たず、その場を去った。
「なんか、変な子だな……ねえ、あの子の名前分かる?」
気になった敦子は、さっき自分を呼んだクラスメイトに聞く。
クラスメイトの子は、すぐに答える。
「知ってるよ。入学して早々に、王子についてのスキャンダルを撮った子なんじゃないかって、話題になったから。」
それは、敦子の記憶にも新しい出来事。
蓮が、千紘と仲良く歩いている姿が、SNSで拡散された事だ。
あの後、あまりに騒ぎ立てる校内の生徒が多かったため、鳩美先生が注意喚起をした。
そのすぐ後に、あの写真は消され、騒ぎも落ち着いたが……
(あの写真を、撮った子かもってこと?)
考えを巡らせていると、クラスメイトの子が名前を口にする。
「確か、松富 心芽さん」
「松富 心芽、か」
敦子が見ると、愛羅の背中はもうなかった。
一体、どんな方法で探るのか。
蓮に危害は加えないだろうか。
そんな心配が、敦子を襲っていた。




