表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/70

第21話②

5月の下旬になれば、春芝高校は忙しくなる。

なぜなら、



 「文化祭だー!」


 「うるっさい!」



叫ぶ洋史を青葉がゲンコツで黙らせる。

相変わらずの夫婦漫才を見て、千紘は苦笑いを浮かべる。


文化祭は、本来秋頃に行われる行事だが、春芝高校の文化祭は、6月に行われる。

3年生の受験を考慮した結果だ。

文化祭の期間は3日間で、他校の生徒を呼ぶことはできない。

代わりに、家族を呼ぶ事ができるようになっている。

生憎、千紘に呼ぶ家族はいない。

父親を呼ぶつもりなどないからだ。

本番は3日間だが、準備期間は2週間以上設けられていて、準備期間中は午後からの授業も準備に変わるため、喜んでいる生徒も多い。

肝心の千紘達のクラスの出し物はと言うと、



 「キャー!やっぱり松富さん似合うー!」


 「そ、そう?」



千紘が廊下で備品を作っていると、教室の中からそんな声が聞こえる。

覗いてみると、心愛が侍女のような衣装を着こなしていた。

そう、千紘達のクラスは劇をやるのだ。

正確には、2年生は劇をやると決まっている。

千紘達のクラスの演目は、シンデレラである。

とは言っても、物語は少し違い、国の王子と、王女に仕える侍女が恋に落ちるという話だ。

そのヒロインである侍女役に心愛が抜擢された。

容姿が整っているのはもちろん、真面目で優等生な所が、王女に仕える侍女という設定にマッチしたのだろう。

実際、その侍女姿が良く似合っており、クラスの男子達が顔を赤らめている。

ちなみに、王子役は青葉がすることになった。

バレー部で背が高く、映えるからだ。

そして、千紘はと言うと、



 「次、鷹辻君の番だよ!」


 「あの、本当にやらなきゃダメか?」


 「ダーメ!セリフないんだから、これくらいする!」



クラスの女子からそう言われ、千紘は渋々衣装に着替える。

千紘の役は、王子を守る騎士の一人だ。

騎士は二人居て、セリフはもう一人に譲った。

着替えたと言ったが、マントを制服に付けただけで、ほとんど変わらない。



 「うーん……なんか普通だね」


 

騎士の姿になった千紘を見て、青葉が言う。



 「悪かったな、普通で」


 「そう?よく似合ってると思うけど」



心愛がそう言って近づいてくる。

気のせいか、いつもより表情が柔らかく感じる。



 「まあ、マント付けただけだからな。似合う似合わないもないだろ」



そう言いながら、千紘はマントをなびかせてみた。



 「ちょっとカッコつけてる」



心愛にクスクスと笑われて、千紘は恥ずかしさで頬が赤くなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ