表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/70

第21話①

ゴールデンウィークも終わり、来週から梅雨入りすると朝のニュースで言っていた今日この頃、千紘はいつものように学校に向かう。

そして、いつも通りに彼女と会う。



 「おはよう、千紘君」


 「……ああ、おはよう」



蓮は可憐な笑顔を千紘に向ける。

あの日、ゴールデンウィーク最終日から、蓮の様子が少し変わった。

千紘もどう表現すればいいか分からないが、どこか柔らかくなった。

何かあったのかと聞いても、別にと笑顔で返される。

その内、千紘も聞くことをやめて、今まで通りに接している。



 「来週から梅雨入りするらしいねー」


 「もう6月になるからな。雨ばっかだと憂鬱だよ」



雨は降っていないが、黒い曇り空を見上げながら、そんな会話をする。



 「でも、男子的には気になるあの子と相合傘とか出来ていいんじゃない?」


 「からかうなよ。そんな相手居ないって知ってるだろ?」


 「なら、私が入ってあげる」


 「アホか。自分で傘持ってこい」



変化と言えば、最近の蓮の言動についても少し変わった。

以前のようにからかってくるのは来るのだが、その内容が、恋愛的なものが多くなった気がする。


 

 (ま、本人はあんまり気にしてないだろうけど)



今も特に変わった様子はないため、蓮にとっては本当にからかっているだけなのだろう。

けれど、千紘の方は違う。

あの時、後ろから抱きつかれてから、蓮が女の子であるという意識が強くなった。

そのため、この登下校も、最近の千紘は少し緊張している。



 「千紘君、聞いてる?」


 

そんな考え事をしていると、蓮が少し怒った顔で言う。




 「悪い、なんだって?」


 「だから、私達もなんだかんだで付き合いが長くなってきたわけですよ。そろそろ、いいんじゃない?」


 「えっと、何の話?」


 「だ、か、ら!私の事、いつまで早霧って呼んでるの?」


 「え?いや、そりゃー……」



いつまでも、と言おうとしたが、蓮から圧がかかる。

その圧に、千紘は負けた。



 (まあ、名前くらいはいいか)

 「分かったよ、れ、蓮……」


 「うん!千紘君!」



簡単だと思ったが、想像以上に恥ずかしい。

慣れない様子で名前を呼ばれ、蓮は笑顔を見せる。



 「ねえ、千紘君」


 「なんだよ」



どうせ照れてる、とか言われてからかわれるんだろうと思った千紘だったが、



 「ふふっ、呼んでみただけ」


 「は?」


 「あ!じゃあね、千紘君」


 「あ、おい!」



蓮はいつの間にか着いていた駅に向かって走って行った。



 「……何か、本当に変わったな」



何が変わったかは分からないが、今の蓮からは、王子を欠片も感じないと千紘は思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ