第19話②
「ここはよく帰りに寄るお店、深夜はBARだけど、帰る頃は定食屋っていう変わった店」
歩き始めて数分、千紘は蓮の学校周辺の知識に驚かされていた。
蓮は、小学校の頃から桜河女子校に通っているだけあって、美味しい飲食店を始め、隠れた娯楽施設など、一人では絶対に気づけないような場所まで教えてくれる。
「ここのゲーセンはよく敦子と来るかな」
「早霧もゲーセンとか行くんだな」
「そりゃ行くよ、プリクラとかあるじゃん」
千紘の脳内に、両腕に女の子を抱えてプリクラを撮る蓮の姿が浮かぶ。
「なんか変な事考えてない?」
「え!?あー、いや……」
蓮が千紘にジト目を向ける。
千紘はそんなに分かりやすかったかと思い、自分の顔を触る。
「それにしてもプリクラかー、撮ったことねえな」
「え!?そうなの!?」
「ん?あ、ああ…」
話題を逸らすために、適当に思った事を言っただけだったが、想像以上に食いつかれ、千紘は驚く。
「今どき珍しいね」
「いや、彼女持ちでもない限り男子は普通撮らんだろ」
彼女持ちなら、彼女に連れられ撮る事もあるだろうが、男子だけでプリクラを撮る事はあまりないだろう。
「……ほら、茉白さんとかと、さ」
「茉白?何でここで茉白の名前なんだ?」
「え!?いや、ほら!茉白さんとか、千紘君の事誘いそうだなー、なんて……」
「あー、茉白はゲーセンとか、そういうところ嫌いなんだよ」
「そう、なんだ……」
「まあ、昔色々とあってな」
茉白は小学生の頃、暗いゲームセンターの中で色々と酷い事をされたことがある。
それ以降、茉白はこういった場所には近づかなくなった。
詳しく言うことでもないので、千紘はそれ以上は言わない。
少しだけ事情を知っている蓮も、それ以上は聞かなかった。
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「悪い、ちょっとコンビニ寄っていいか?」
「うん、私は外で待ってるよ」
「悪い、すぐ用済ませてくる」
そう言って、千紘はコンビニの中へと入っていく。
残った蓮は、小さなため息をこぼす。
(何聞いてんだ、私)
茉白と話したあの日から、蓮の中で謎のモヤモヤが居座っている。
その正体が蓮には分からず、分かっていることは、あれから、茉白と千紘の関係が気になっている事だけだ。
(あんな事聞いても、困らせるだけだっての)
またため息をこぼす。
ふと、コンビニのガラスに写る自分の姿が目に入る。
いつもズボンを履いているのに、スカートを履いて、いつもは男物のジャケットとシャツを着ているのに、ヒラヒラのフリルを着ている。
(……こんな、似合わない格好までして)
ガラスに写る自分は、服に着られている感が否めなかった。
さらに気持ちがマイナスなっていたその時、
「そこのレディ、今一人かい?」
「えっと、私?」
後ろから話しかけられ、振り返ると、金髪の男が薔薇を手に持って立っていた。