第18話③
話は、昨日の夜にまで遡る。
連休が始まるということもあり、蓮は敦子の家にお泊まりをしに来ていた。
お風呂に入る直前、蓮の服装を見て、敦子はふと思った事を口にした。
「蓮ってさ、何で男物ばっかり着てるの?」
「何でって、学校の友達と出かける時は、王子っぽくするでしょ」
「それって、別に私の前ではやらなくて良くない?」
蓮を王子だと言っている学校の友人と出かける時は分かるが、蓮の事を昔から知っている敦子と出かける時まで、蓮は男物の服を着ている。
「もうちょっと女の子らしい格好とかすれば?」
「え〜?別にいいよ、似合わないだろうし」
蓮の言葉に、敦子は呆れてしまう。
蓮は気付いていないのだ。
自分が持つ、女としてのポテンシャルに。
少し考えた敦子は、ある名案を思いつく。
「蓮、先に風呂入っていいよ」
「え、そう?じゃあお言葉に甘えて」
そう言って蓮はパジャマを持って敦子の部屋を出る。
階段を降りていく音を確認してから、敦子は蓮の荷物から明日の遊ぶ時用の着替えを取る。
やはりというか、男物である。
「クックック、任せといて蓮、私があなたを女にしてあげる」
敦子は、不敵な笑みを浮かべながら、蓮の服を持って部屋を出た。
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「はぁ!?間違えて洗った!?」
「ごめーん、昨日の服と一緒にそのまま」
翌日、蓮が着替えようとすると、服が無いことに気付く。
焦った蓮が敦子に聞くと、間違えて洗濯してしまったと言う。
「どうすんの!?今日着る服ないんだけど!?」
「ごめんごめん、私の服貸してあげるから」
「え、いや、それは……」
敦子の持っている服は、どれも大人っぽい女性物ばかりで、少し気が引ける。
「大丈夫大丈夫、貸すのは中学の頃のだから♡」
「もっと嫌!」
蓮は頑なに拒絶した。
今の敦子の服は、大人っぽくて嫌だが、中学の頃の敦子の服は、フリフリの可愛い系ばかりだ。
蓮は自分に似合わないと確信していた。
「そんな派手なのは貸さないって、普通の、無難なやつだから」
「ちょっ!?」
敦子は蓮を着せ替え人形のように無理やり着替えさせる。
「ほらー!めっちゃ似合ってるじゃん!」
「う〜、こんな可愛い服着るなんて……」
敦子が着せたコーデは、ロングスカートにフリフリの服で、耳にはハート型のイヤリングを付けさせている。
「つべこべ言わず着る!さ、行くよ!」
「さ、先に行ってて!心の準備が出来たら行くから!」
「えー?そんな事言って、着替えないでよ?」
「わ、分かってるよ!」
敦子は渋々先に出て行き、蓮は鏡の前で自分の姿を見る。
普段、絶対に着ないような服で、自分ではないように感じる。
「……ええい!なるようになれ!」
敦子が出てから20分、蓮は覚悟を決めて外に出た。
行った先で、千紘に会うことを知らずに。