第16話②
「結局、鷹辻は蛍峰と別れたのか?」
昼休みになり、約束していた青葉と洋史の3人で昼食を食べながら談笑の最中に、洋史が思い出したかのように千紘に聞いた。
「あんた……また……」
「いや、大丈夫だから……」
先程同様、青葉が叩こうとしたので、千紘が止める。
千紘が良いならと青葉も拳を収める。
落ち着いたところで、千紘が話し始める。
「そもそも、俺と茉白は付き合ってないんだよ」
「え!?」
その事に驚いたのは、洋史ではなく青葉だった。
「ん?そんなに驚く事か?」
洋史が不思議そうに言う。
「いや、驚くことでしょ!あんなに一緒に居たのに!?」
「俺達だって、よく一緒に居るだろ?」
「それはそうだけど、距離感が違うっていうか……とにかく、私は付き合ってるのかと思ってた」
「まあ俺もそう思ってはいたが……」
洋史も声こそ上げなかったが、少しの驚きはある様子を見せる。
「付き合っては無いが、告白はした」
「え!?」
「そんでフラれた」
「えー!?」
青葉が連続して驚きの声を上げる。
「い、いつ!いつ告白したの!」
「バレンタインの日だよ、呆気なく玉砕したけどな」
「ってことは2月?でも、それ以降も2人でよく一緒に居たような……」
青葉は思い出しながら言う。
洋史も同意見らしく、うんうんと頷いている。
「それこそ腐れ縁ってやつかな。なんだかんだの関係に落ち着いていたというか」
「でも、最近は話してないよね?何で?」
洋史から始まった話題だが、気づけば青葉が質問をするようになっていた。
千紘は気にせず話を続ける。
「クラスも離れたし、良い機会だから、お互い交流を広げた方がいいかなって思ったんだよ」
心愛に言われたという点は伏せ、本当の事を話す。
2人は納得したように頷いている。
「それは確かに大事かも。私も中学からバレー初めて、洋史以外の人と仲良くなってから色々と変わったもん」
バレー部に所属している青葉が、自身も同じ経験があると話す。
洋史も同じようで、また頷いている。
「そっか、私達は中学で部活に入ったのがタイミングだったように、鷹辻君達は今がタイミングだったわけかー」
謎が解けたと言わんばかりの表情を青葉がしている。
洋史を止めてはいたものの、やはり千紘達の事を気になっていたようだ。
「でも、何でそんなに気になってたんだ?」
「ん?何が?」
「いや、俺と茉白のこと。さっきも俺と話してみたいって言ってたし」
「あれ?私の事覚えてないの?」
「え?」
まさかの返事に千紘は焦る。
過去を遡るが、青葉と会った記憶は出てこない。
「私、1年の時も鷹辻君と同じクラスだったんだけど」
「え?」
「ちなみに、俺は隣のクラスだ。だから体育は一緒に受けてたぞ」
「え?」
2人のカミングアウトに、千紘は自分の視野が想像以上に狭かったのだと考えを改めた。