第15話②
放課後になり、蓮は昼休みに敦子に見せてもらった写真の事を考える。
蓮と千紘が仲睦まじく登校している写真を撮り、SNSに上げた犯人は一体誰なのか。
(てか、勝手に上げるとかダメでしょ)
盗撮もダメだが、さらに勝手にSNSに上げるなど、最悪の行為である。
蓮だけならいいが、顔ははっきりと写っていないが、千紘にまで迷惑がかかるかもと思い、蓮は怒っていた。
(絶対犯人を見つけるんだから!)
蓮は小さく握り拳を作り、そう決意する。
「王子!また明日お会いしましょう!」
「うん、またね、私の女神」
「「キャー」」
1年生の女の子に挨拶され、蓮は笑顔で返す。
2人の後輩は、黄色い悲鳴を上げながら走り去った。
「ふぅ〜」
一日中、王子キャラを作っていた蓮は、ため息をこぼす。
特に最近は、告白される機会が多く、気疲れが溜まっている。
(こんな時は、気楽に話せる友達をからかいたいよね〜)
照れ顔の千紘を思い浮かべながら、蓮はクスクスと笑う。
そこに、
「随分楽しそうね」
後ろから話しかけられ、蓮は肩を跳ねさせる。
振り向くと、鳩美先生がいつものように凛々しく立っていた。
「は、鳩美先生!?脅かさないでください……」
「それはごめんなさい、あまりに無防備だったから、つい」
柔らかい笑みを浮かべながら、鳩美先生は言う。
その笑顔に、王子である蓮ですら見惚れる。
「王子様にそんな風に見つめられると、照れてしまうのだけど」
「はっ!ご、ごめんなさい!って、先生まで私を王子って言うんですか!?」
「だって、王子なのでしょ?もっとも、今のあなたは普通の女の子にしか見えないけれど」
いつも千紘をからかう立場の蓮は、鳩美先生にからかわれ、照れる。
そんな蓮を見て、鳩美先生は我が子を見るような優しい顔をする。
その顔を見て、蓮はドキッとする。
「早霧さん?どうかした?」
「な、何でもないです!」
固まる蓮に、次は生徒を心配する教師の顔で話しかけてくる。
「少しからかいすぎたわね、気をつけて帰りなさい」
「は、はい!さよなら!」
挨拶を交わし、また優しい笑みを浮かべて鳩美先生は仕事に戻った。
先生の背中が見えなくなるまで見送り、蓮も帰路に着く。
(先生のあの顔、どこかで……)
鳩美先生の見せた、母親のような優しい笑みを、蓮はどこかで見た気がした。
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カシャッ
蓮と鳩美先生が楽しげな会話をするところを、一人の生徒が物陰から見ていた。
その生徒が撮った写真には、いつものようなイケメン王子の顔ではなく、普通の女の子の顔をした蓮が写っている。
(これは、使い物にならないな〜)
少女は、撮った写真を消去して、蓮の方をもう一度見る。
先生は既に立ち去っており、何か考え事をしている蓮の姿が少女の目に映る。
「王子の化けの皮、ぜ〜んぶ剥がしてあげる♡」
少女は、不敵な笑みを浮かべ、ツインテールの髪を揺らしながらその場を去った。




