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第15話①

桜河女子高校は、男子禁制の花園である。

最寄り駅に停車する電車は、車両の8割が女性専用車であり、校内の教師を含めた全ての人が女性になっている。

そんな花園には、『王子』と呼ばれるイケメン女子が居る。

成績優秀で、運動神経も良く、女性にしては背丈もあり、何より顔が良い。

そんな王子の噂は、高等部、中等部の両校に知れ渡っている。



 「早霧先輩、好きです!私と、付き合ってください!」


 「えっと、困ったな……」



そんな王子こと早霧 蓮は、2年生に進級してから、後輩女子からの告白ラッシュを受けているのだった。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 「ぶっはぁ〜」



昼休みになり、いつものように空き教室に蓮と敦子は入り、蓮が敷いてあるマットに寝転がる。



 「随分とお疲れだね〜」


 「そりゃそうだよ、今日だけで何回目〜」


 「ほんとモテモテだね〜、さすが王子」



進級してから1週間、既に蓮の元には30人近い1年生が告白をしてきている。

マンモス校と言えど、このペースで行くと、一学期の間に1年女子を制覇する勢いである。



 「みんな私に夢見すぎだよ〜」


 「仕方ないじゃん、中等部の子達は噂でしか聞いてないんだから」


 「そもそも、誰が噂なんて流してんのよ〜」



蓮は近くにあった兎のぬいぐるみをだき抱えながら言う。

この空き教室には、蓮と敦子が持ってきた私物で溢れている。

校内では、王子の休憩室と呼ばれていて、敦子以外は入室禁止である。



 「噂って言うのは、勝手に流れていくもんなの、こんな風に、ね」


 「……!?こ、これ!?」



敦子が見せてきた写真を見て、蓮は声を上げて驚く。

写真には、蓮と千紘が仲睦まじく登校している姿が写っていた。



 「ど、どこでこんな……」


 「多分、蓮の家の近くに住んでる子が居るんだろうね。珍しいけどね」



蓮や千紘が住んでいる地区は、普通の住宅街ではあるが、近くに高校が多いこともあり、わざわざ電車を使わなくてはならない桜河女子高校に通っている生徒は蓮くらいのものだった。



 「今ウチの高校はこの話で持ち切りだよ」


 「嘘でしょ!?なんで教えてくれなかったの!?」



蓮はSNSをほとんどやっていないため、こんな写真が拡散されているとは知らなかった。



 「これのせいで、最近告白が増えてるんだよ。どこの馬の骨とも知らん男に王子が盗られる〜って」


 「と、盗られるって……別に、私と千紘君はそういうんじゃ……」


 「ん〜?ほんとかな〜?」


 「ほんとだよ!そもそも、好きとかよく分かんないし……」


 

蓮は少し恥ずかしそうにしながら言う。

そんな蓮の姿を敦子は面白がっている。



 「まあ?蓮はモテモテだけど、恋愛未経験だもんね〜」


 「な!?敦子だってそうでしょ!」



2人で騒いでいると、扉が3回ノックされる。



 「は、はい!」



蓮が返事をすると、扉が開き、髪の長い凛々しい女性教師が立っていた。



 「早霧さん、垣根さん、こんな風に部屋を作るのはいいですが、あまり騒がしくしないように。防音性能が高い訳では無いんですよ」


 「は、はい…すみません、鳩美先生」



2人にそう注意したのは、鳩美(はとみ) 千里(せんり)

桜河女子高校の生活指導の教師であり、厳しくも優しい先生だ。

その凛々しさから、生徒の間でも人気がある。



 「分かればいいんです。邪魔をしましたね」



それだけ言って、鳩美先生は職員室の方へと向かった。

女子生徒からの視線を浴びながら。



 「鳩美先生って、カッコイイよね〜」


 「え?そう?厳しいだけじゃん」



蓮は去りゆく鳩美先生の背中を、キラキラとした目で見つめている。

その様子を見て、敦子は呆れるのであった。

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