第14話②
蓮と話した事で、不安な気持ちは薄れたものの、罪悪感というものはまだ千紘を襲っていた。
茉白の性格を、過去を知っている分、より罪悪感は重くのしかかる。
表情には出さないようにと話していたが、蓮は千紘がいつもより落ち込んでいる事に気づいた。
「……ねえ、ちょっとコンビニ寄っていい?」
商店街までの帰り道に一つだけあるコンビニを指さして蓮が言う。
「コンビニ?まあいいけど」
千紘と蓮がコンビニに入ると、女性の店員さんがいらっしゃいませー、と気だるそうな声で言う。
蓮は一直線に目的の品の場所へと向かう。
千紘はその後ろをついて行く。
「さ!好きなの選んでいいよ!私が奢るから」
蓮が向かったコーナーは、アイス売り場で、そこで手を広げて言う。
「アイスって、夏でもないのにか?」
「夏じゃないけど、もう十分気温は高いし」
「確かにそうだけど……」
蓮の言うように、まだ4月だというのに気温は高めで、学校から少し歩いただけでも汗ばむ程である。
それでも、千紘からすれば、アイスを食べるというには少し早い気もしている。
「私が甘い物食べたいんだからいいでしょ!つべこべ言わずに選ぶ!」
蓮が急かすので、一番近くにあった70円のアイスを選ぶ。
昔からあるアイスの定番だ。
蓮も同じものを取り、レジに向かう。
先に出ていろと言われたので、千紘は大人しくコンビニを出る。
しばらく待っていると、蓮がコンビニから出てきて、アイスを手渡してくる。
「はい千紘君の、夏じゃないとか言って、一番冷たいやつじゃん」
「早霧が急かすからだ。まあ、奢ってもらったから文句は言えねえけど。なんで突然?」
アイスを食べるのはいいが、蓮が奢った理由が分からず、千紘は尋ねる。
「深い意味なんてないよ。ただ私が食べたかっただけ」
蓮はアイスを食べながら答える。
食べるスピードは早く、既に3分の1は食べている。
「……それに、元気がない時は、甘い物が一番でしょ」
その言葉を聞いて、ようやく表情が暗くなっていた事に千紘は気づく。
それと同時に、蓮に気を使わせた事を申し訳なく思った。
「悪いな、気使わせて」
「別に、元気出た?」
「ああ、お陰様でな」
そう言って千紘が笑うと、蓮は気恥ずかしくなり、アイスを食べるスピードを早める。
ペースを上げすぎて、頭が痛くなり、頭を抑える。
「子供か」
それを見た千紘が笑いながら言う。
千紘もアイスを食べ進めて、半分を食べ終える頃、
「あっ」
そう声を上げた。
千紘の棒には、『あたり』と書かれていた。
(……悩んでも仕方ないよな)
茉白と距離を置く事が正解かは分からない。
けれど、悪いことばかりでは無い。
あたり棒を見て、そんな風に千紘は感じた。




