表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/70

第14話①

千紘の言葉を聞いて、茉白は動くことが出来ない。

全て嘘であって欲しい、名前を呼べば冗談だと言って手を差し伸べてくれる事に期待する。

足音が聞こえなくなったところで茉白は振り返る。

そこに千紘の姿はない。



 「……嘘つき」



茉白の目から、一滴の涙が流れる。



 「私達、家族じゃなかったの……」



茉白の声は、風の音に掻き消された。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



千紘は最後まで振り返ることは無く、学校を後にする。

緊張と共に、心の中に罪悪感が込み上げてくる。

茉白の今にも泣きだしそうな顔を思い出す。

ずっと一緒に居て、一度も見たことの無い顔だった。



 (……これで、良かったんだろうか)



千紘の中に迷いが生まれる。

今からでも引き返して、冗談だと言って今まで通りに戻るのは簡単だ。

千紘の足が止まる。

そして、後ろを振り返ろうとしたその時、



 「千紘君?」



千紘を呼ぶ声が聞こえ、振り返る事を踏みとどまる。

声の方を見ると、蓮が立ち止まる千紘を不思議そうに見ていた。

無意識に早く歩いていたのか、いつの間にかいつもの駅前まで来ていたらしい。



 「そんなところで立ち止まってどうしたの?」


 「……いや、なんでもない」



千紘は止めていた足を進め、蓮の方へと歩いて行く。

目の前まで来たところで立ち止まり、蓮の顔を見る。



 「な、何?」



じっと見られた蓮は、恥ずかしさで視線を逸らす。

そんな事もお構い無しに千紘は蓮をじっと見る。

そして気づく、罪悪感と一緒にあったどこか不安な気持ちが消えていることに。

蓮という存在に、茉白と同等の安心感を抱いていることに。



 「茉白との16年が、たったの2ヶ月と一緒って……」



同じ安心感なのに、月日の違いがありすぎて、千紘は笑う。



 「千紘君、ほんとにどうしたの?」



いつもと明らかに様子の違う千紘を見て、蓮は本気で心配になる。



 「いや、なんでもないよ」



そう言って千紘は蓮の頭をぽんっと一撫でだけする。

それは無意識の行動だった。



 「……え!?」


 「どうした?早く帰ろうぜ」


 

戸惑う蓮を置いて、千紘は歩き出す。



 「……な、何今の」



千紘の突然の行動に、蓮の心臓の音がうるさい程の鼓動を鳴らした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
イケメン女子が女の子になる展開大好物です
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ