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第13話①

月日はあっという間に過ぎ去り、4月初旬

春休みが終わり、学校が再開、千紘達は今日から二年生である。

朝、いつも蓮と待ち合わせ、もとい暗黙の了解となっている交差点に千紘は着く。

見ると、既に蓮が立っていて、千紘に気づいている様子はなく、スマホを見ながら前髪を触っている。



 「相変わらず早いな」


 「おはよう、千紘君」


 

千紘が挨拶をすると、蓮は笑顔で返す。

気のせいか、いつもより笑顔が輝いて見える。

二人はそのまま歩きだし、蓮が乗る駅まで一緒に歩く。

この朝の登校も気づけば、始まってもうすぐ2ヶ月である。

そう考えると、千紘と蓮が出会ってまだ2ヶ月も経っていない事に千紘は驚いた。



 「それにしても、今日から後輩ができるのか……」


 「なんだ?早霧は先輩になりたくないのか?」



憂鬱そうにしている蓮を見て、千紘が聞く。



 「ウチの高校はほとんどが中等部から来るんだよ。私の噂はもう広まってるから……」


 「あー、なるほど……」



桜河女子高校の王子の噂は、中等部にも広まっているらしく、新しく入ってくる一年生達も、蓮に黄色い悲鳴を上げることだろう。



 「ま、頑張れよ王子様」


 「……他人事だからって楽しんでるよね?」



蓮がジト目を向けてくる。

その視線を千紘は話を逸らすことで誤魔化した。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



蓮と駅で別れて、千紘は学校に到着する。

新しいクラスは中庭で発表されるので、そこに一直線に向かう。

中庭に着くと、既に貼りだされているようで、掲示板の前に人集りができていた。



 (こりゃ、しばらく見れそうにないな)



千紘は、人が捌けるまでベンチに座って待つことを決める。

本を読んで待っていると、隣に誰かが座った気配がした。

横を見ると、心愛がまっすぐ前を見据えて座っていた。



 「おはよう」


 「おう、おはよう……」



心愛は千紘の方を向くことなく挨拶をする。

その姿勢に、千紘は妙な圧を感じた。



 「新しいクラス、見に行かないの?」


 「人が多いからな。もうちょい捌けてから行くよ」


 「そう。なら、私もそうするわ」


 「え?」


 「何?」


 「……いや、別に」



茉白も大概だが、千紘からすれば心愛も中々の曲者である。

茉白のように、長い時間を過ごしていない分、むしろ考えが読みづらい相手だ。

それから、特に会話をする訳でもなく数分が経ち、人がまばらになったところで千紘は立ち上がる。



 「そろそろ見に行くわ」


 「そう」



一応心愛に声をかけるが、心愛が立ち上がる様子はない。

強制するものでもないので、千紘は一人で表を見に行く。

表を見て、早速杉人の名前を2年5組に見つけた。

5組に千紘の名前は無かったため、クラスは離れてしまった。

そして、2年6組のところに自分の名前を見つけたのだが、



 「え!?」



2年6組の中に、茉白の名前が無いことに千紘は驚いた。

普通なら不思議では無い状況だが、千紘と茉白に限っては違う。

1年生最後の日に、茉白はクラスが離れる事を危惧していたが、千紘は特に心配していなかった。

それにはもう一つ理由があり、千紘と茉白は小学校1年の頃からずっとクラスが別になった事などなかったのだ。

しかし、今回は分かれた。

茉白の名前は2年1組の所にあった。

6組とは端と端である。



 「こんなこと、初めてだ……」



学生になって初めての出来事に、千紘は驚きを隠せなかった。

そして、茉白の代わりにあった名前が、



 「あら?海原君と茉白は別みたいね」



驚きのあまり固まっていた千紘の後ろから冷静な心愛の声が聞こえる。

心愛の名前は、2年6組の欄にしっかりと記されている。



 「よろしくね、鷹辻君」


 「……ああ、よろしく」



心愛は髪を耳にかけて、小さく微笑んだ。

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