表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/70

第12話②

千紘の父親が夕方頃に帰宅したタイミングで、茉白も自分の家へと帰って行った。

結局、昼ごはんを食べた後はただ家に居座っていただけだった。

千紘が店仕舞いをして、部屋に戻る。

千紘の中の嫌な予感はまだ消えない。



 (茉白のあの笑顔は、何かを隠したい時の笑顔だ)



茉白の考えている事を千紘は完璧には理解出来ない。

けれど、表情から簡単には予想できた。



 (隠したい事ってなんだ?茉白自身のことか、それとも……)



千紘は昼間の蓮の様子を思い出す。

用事があると言って帰ったらしいが、千紘はどうも引っかかった。

外の風が強くなってきて、その音がより千紘の胸騒ぎを掻き立てる。


 「……よし」



千紘はスマホを取り、蓮に電話をかける。

千紘の思い過ごしならそれでいい。

けれど、もし茉白に何かされたのであれば……

スマホのメッセージアプリで蓮の名前をタッチし、通話ボタンを押す。

ワンコールもしないうちに、通話に出る音がした。



 『も、もしもし!?』


 「うお!?声でか」



蓮のあまりの声量に千紘は一瞬耳からスマホを離した。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



千紘の声を聞いた瞬間、蓮は嬉しさが込み上げてきた。

恐怖心が和らぎ、安心感を覚えた。



 「ど、どうしたの?こんな時間に」


 『いや、今日ほとんど話さず帰ったろ?何かあったのかと思って』



電話越しの千紘の声は、いつも隣で聞くよりも近く感じる。

自分の様子を心配してくれた事に喜びも感じた。



 「なんだい?そんなに私と話せなくて寂しかったの?」


 『……電話しなきゃ良かった』



蓮はからかうように笑いながら言う。

電話の向こうで千紘がため息をつくのが聞こえた。

そんなやり取りすら、今の蓮には楽しくて仕方がない。



 「そう言わずに、少し話そうよ」


 『まあ、いいけど、その前に、今日茉白に何かされたか?』



茉白の名前を聞いて、蓮は一瞬固まってしまう。



 『……やっぱり、何かされたのか?』



蓮の反応に違和感を持った千紘がそう聞く。

蓮は慌てて首を横に振りながら答える。



 「いや!されてないされてない!何もされてないよ!」


 『……本当か?』


 「ほんとほんと!ただちょっとお喋りしただけだって!」


 『まあ、それならいいけど……』



千紘は少し安心したのか、声音が柔らかくなる。



 「……私の心配してくれるなんて、千紘君は優しいね〜」


 『そうか?普通だろ』


 「そうかな?普通は好きな子の味方をするものだよ。今の千紘君の言い方は、茉白さんを悪者にする言い方だよ」



 『……好きな人とか、関係ねえよ』


 「え?」


 『早霧は俺の友達だ、友達の心配するのは、当たり前だろ』



千紘の力強い言葉に、蓮は目を見開き、クスリと笑った。



 『な、何で笑ってんだよ!今結構良いこと言ったろ!』


 「ごめんごめん、千紘君が顔を赤くして言ってると思ったら、つい」


 『くそっ!二度と言わねえ!』



蓮はまたクスリと笑う。



 (全く、君はどうしていつも、一番欲しい言葉をくれるの?)



茉白の瞳と、昔のトラウマを思い出して、恐怖でいっぱいだった蓮に、千紘は欲しい言葉をくれる。

それが、たまらなく嬉しかった。



 『じゃあ、そろそろ切るぞ?』


 「あー!待って待って!もう少し話そうよ!」


 『ん?まあ、別にいいけど』


 「ありがとう!それじゃあ、何から話そうかなー」


 『そんなにあんのか?』


 「ふふ♪今日は寝かせないよ」


 『うわ〜、そのセリフ、早霧じゃなかったらドン引きだわ』



蓮はくすくすと笑い、二人はしばらく話を続けた。

蓮の体の震えは、いつの間にか消えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
凄い目で睨まれて怖かった…くらいは言っても良かったと思うよ蓮ちゃん このいつも通りを装った対応が悪手になりそうな予感がする
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ