第7話①
「鷹辻君、ちょっといい?」
学年末テストが終わり、肩の荷がおりた千紘が帰宅しようとしたところで呼び止められる。
学校が終わる時間も早い今日は、家を手伝う予定だったのだが、自分を呼び止めた人物を見て、無視する訳にはいかないと思い、千紘は答える。
「何か用か?松富」
千紘を呼び止めた少女は松富 心愛
入学してすぐに生徒会にスカウトされ、一年からバリバリに働く優等生で、常に生徒の模範となる姿勢を見せる少女だ。
その一方で、眼鏡の奥から見える鋭い眼光が怖いと恐れられている。
テストでは常に学年トップの成績で、運動神経も良い。
正に完璧な生徒だ。
ただ一つ、変人である茉白の親友という点を除いて。
「少し聞きたい事があるんだけど、今から時間って作れる?」
正直面倒だと思った千紘だが、心愛には茉白との件でも世話になった機会が多い。
むしろ今までほとんど話していなかった方がおかしいくらいである。
「ああ、問題ないよ」
「じゃあ、少し待ってもらえる?生徒会の仕事を終わらせてくるから。校門前で待っていて」
そう言って心愛は背を向けて去っていく。
千紘も階段を降りて、校門へと向かった。
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「お待たせ」
10分程待ったところで、心愛と合流する。
校門前で立って話す訳もなく、二人で歩き出す。
その間、一切の会話もなく、心愛はただ千紘をずっと見ているだけだった。
さすがに気まずさを感じていた千紘の目に、ケーキバイキングと書かれた看板を出す店を見つける。
「とりあえず、ここにでも入るか」
千紘の提案に心愛は頷き、二人でスイーツ店へと足を踏み入れた。