第1話①
「ごめん、千紘の事は家族としか思えない。そういう目で見たことない。見れない」
鷹辻 千紘
春芝高校一年生 16歳
本格的な寒波が訪れた2月14日のバレンタイン
ずっと好きだった幼馴染への告白は、呆気なく幕を閉じた。
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(家族としか思えない、か)
幼馴染への告白が玉砕に終わった千紘は、実家の花屋を手伝いながらも、傷心で気分が落ちていた。
幸い、今日は常連のおばあさんしか来ておらず、悪い接客態度も許されている。
問題は、
「千紘ちゃん、茉白ちゃんにフラれちゃったんだって?元気出しな」
「千紘、まだまだ若いんだから、前向いて歩けよ!」
問題は、店に顔を出す常連が、千紘がフラれたという事実を知っている事だ。
千紘の実家は小さな商店街にあるため、噂の広がるスピードが異常に早い。
告白した翌日だと言うのに、商店街付近に住むほとんどの人が、その事実を知っていた。
「みんなしてからかうなよな。こっちは結構キツイってのに……」
千紘の心のダメージは、周りが想像するモノよりはるかに強かった。
それもそのはずで、千紘と千紘が告白した幼馴染である蛍峰 茉白は、生まれた時から一緒だった。
生まれた病院も、幼稚園も、小学校も中学校も一緒で、高校も千紘が必死に勉強して茉白と同じ学校に入学した。
10年以上も片思いだった相手に呆気なくフラれたのだ。
ダメージが小さいはずがない。
「……次、どんな顔で会えばいいのやら」
「すみません」
入口の方から常連のおじいさんおばあさんとは違う、甲高い声が聞こえた。
「はいはい、いらっしゃい、ませ…」
声の主を見て、千紘は一瞬固まった。
同じ性別の千紘ですら見惚れる程の美しい容姿をした青年がそこにいた。