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麒麟の涙  作者: 蒼月さや
3/13

 テスト終了後。由良は老神主の言いつけ通りに、直ぐ様帰路に着いた。

「……おい」

 声を掛けられたのは、あと数メートルで自宅に着くという、林の中だった。人気のない道のりだったため、すぐ後ろから聞こえた声に、由良はびくりと肩を竦めて振り返った。

 真後ろに立っていたのは、同じ高校の制服に身を包んでいる男子生徒だった。

 青みがかった短い黒髪に、かなり整った容姿をしていて、一度会ったら忘れられないような見目をしているが、由良には見覚えのない男だった。

「はい、何でしょうか?」

「俺のこと、わかるか?昨日隣のクラスに転校してきた、碓氷巽(うすいたつみ)だ。よろしく」

 巽は、無理矢理作った笑顔で名乗った。

「あ、そうなんですか。私は…」

「中野由良、十七歳。そして…麒麟の神子だ」

「え?」

 呆然としている由良の両手をつかまえた巽は、そのまま前に詰め寄り、由良に迫った。

「な、何をするのですか?」

「それ、聞くか?」

  茂みの中に押し込まれた由良は、思わず尻餅をついた。巽はすかさず、そんな由良の上にのしかかっていく。

「嫌!やめて…!」

 悲鳴を上げるのが一瞬遅く、巽が片手で由良の唇ごと顎を押さえ込み、声を封じる。由良の後頭部が地面に付き、リボンが崩れる。巽のもう片方の手は、スカートをたくしあげ、太ももを撫で上げた。

 由良は全力で抵抗するが、十センチ以上身長差のある体格の男に押さえ込まれては、手も足も出ない。それよりも恐怖が勝り、実力の半分も力が出せなかった。

 いざという時、静電気は効かないし、制服のスカートというのは、全く防御力に欠けていると、由良は痛感する。そのまま由良の下着の中に手を突っ込まれそうになり、由良は恐慌を起こす。

 ブルブルと震え出す由良に、巽はそれでも侵攻を止めようとはしない。

 すると、二人の頭上の空に、急激に黒い雲が広がり、ゴロゴロと音が鳴り始める。

(お願い!誰か助けて!)

 由良が頭の中で叫んだ時、二人に雷が落ちた。

 雷の直撃を受けた二人は、しかし、次の瞬間にはその場から消え去っていた。

 二人の鞄だけが残った茂みに、雨が落ちてくる。そこにははじめから誰も存在しなかったかの様に、土に雨粒の跡が残った。

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