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麒麟の涙  作者: 蒼月さや
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 由良が病室に向かった頃。三人の神子が巽のいる体育館に合流した。

 桜の君が麒麟に変化し、由良が涙を手に入れ病室に向かったことを三人に説明すると、その場に安堵の空気が滲んだ。

「じいさんも、元に戻ったんやな。よかった、これで楓も元に戻せる」

 道也が、自分の手の平にパンチを繰り出すと、勝ち誇って言った。

「それはどうだろう?」

 桜の君が、水を差す。

「麒麟の涙は万能薬だが、本人が望むこと以外には作用しないのだ。楓とやらが、人間に戻ることを心から望んでいるならば、問題ないが」

「じゃあ、無理矢理飲ませても、無駄っちゅうことか?」

「無駄か…もっと悲惨なことが起こるかも」

「悲惨て、どないな?」

「例えば、また違う動物に変化するとか」

「んなアホな!」

 がっくりと肩を落とす道也に、桜の君がポンポンと背中を叩いた。

「まあ、じっくり説得するしか無いかな。猶予は三日だが」

「まだわからないことがあるのですが、聞いてもいいですか?」

 千隼の質問に、桜の君は快諾し、頷いた。

「神子は子供が出来ると死ぬという、血の呪いについて、何か知っていることはありますか?」

「ああ、それは、勾玉の副作用だね。今はその呪いからは解放されているはずだよ」

 その言葉に、四神一同皆ほっとした表情を浮かべる。

「誰や?呪いはまだ…みたいなこと言うたのは」

 道也が千隼の脇腹を肘で打つ。千隼は、つんと澄まし顔でとぼけて見せた。

 しかし、暗い表情になって、桜の君が言った。

「ただし、私も含めてだろうけど、いつの時代も神子は短命だった。それは肝に銘じておいてくれ」

「それはなぜですか?」

 圭斗が驚いて質問する。

「神通力を扱えるようになるからさ。神様が万物に愛されている証拠だね。でも、神通力は無尽蔵なわけじゃない。寿命を削って繰り出される技だ。君たちは、いざという時、技を使わずにいられるかい?」

 自分以外にも命の危機に晒されたときに、黙って見ていられるか。それは、自分以外だからこそ難しい事柄だ。

「私の呼び名『桜の君』というのは、桜子さんの婚約者という意味がある。それ以外には求められていないということだから…使うしかないよね、神通力」

 ちょっと皮肉気味な口調だった。

「桜子さんて、かの令嬢のことか。そういや、どういった立場の人や?」

 道也が尋ねる。

「桜子さんは、皇族の方だよ。次期天皇候補」

 話を元に戻そうか、と桜の君は続けた。

「神獣への変容も、技の一種だから、気をつけてね。あと、怒りに身を任せることは、天変地異を引き起こして身を滅ぼすから、やめた方がいい。なんなら、もう一度勾玉で封印することも可能だけど…誰も望んでいないみたいだね」

 桜の君は、一つため息をついて、間を取る。

「とにかく、人として生まれ、生きて行こうと決めた私達なのだ。何事にもめげたりしないこと。急がば回れだ」

「はい」

 四人の返事が、綺麗に揃った。


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