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整備長の言ったことは本当だった。
ハラが基地の屋外にある休憩用のベンチに座ってぼんやりと滑走路の風景を眺めていると、この基地の司令官である鬼上司(怒るととっても怖いけど、ものすごく優秀な女性だった。ハラは密かに彼女に憧れていた)から呼び出しを受けた。
ハラが(被弾したことについて怒られるのかと思いながら)司令官室まで行くと「新型機が手に入った。お前にやるよ」と笑顔で言われた。
「ありがとうございます」と敬礼しながらハラは言った。
「撃たれたんだって? 調子でも悪かったの?」とたばこに火をつけながら楽しそうな顔をして司令官は言った。
「相手機は新型機でした。二機とも見たことも、もらった情報にもない機体でした。少なくとも私の飛行機よりも性能は三十パーセントは上でした」とハラは言った。
「データはとった?」
「取りました」
「わかった。ならそれでいい。次の出撃から新型機に乗ってもらう。機体は明日には基地に届くから見ておくように。今日はもう休んでいい」と司令官は言った。
「失礼します」とハラは言って司令官室をあとにした。
司令官室を出ていくときに司令官は「ハラ。今回もご苦労様」とハラに言った。