4/33
4
「撃たれたのか? 珍しいな」基地に帰るとそんなことを言われた。
「これで無傷の飛行記録も百日で終わりだな」とハラの肩をぽんぽんと叩きながら整備長は言った。
「でも敵機はちゃんと撃墜した。二機」と飛行機から降りたハラは言った。
基地の滑走路の上には数機の飛行機が止まっている。その中で無傷の飛行機は一機もなかった。みんなどこかしらに被弾をしている。
「今回の相手機は新型だった。性能が上がってる」歩きながらハラは言った。
「そりゃそうさ。戦争だもの。戦争していれば技術は向上する。こっちも向こうもその国力のすべてを戦争に捧げてる。飛行機の性能が上がらないわけがない」整備長は言う。
「私は新型をもらってない」ハラは言う。
「すぐにもらえるさ。ハラは天才だ。向こう側に名前も知られているくらいの有名人。天才パイロットだ。新型機だって優先的にもらえるよ」
「それっていつ?」
「もうすぐさ」と笑いながら整備長は言った。