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「先輩。驚かないでくださいね」
そう言って雪風は隊員たちと一緒に灰色のシーツをとった。
するとそこには『黄色い飛行機』があった。戦闘するための飛行機では無い。長距離の飛行をするための調整をした民間用の飛行機。
その黄色い飛行機はハラが昔、単独で長距離大陸間横断飛行をした黄色い飛行機とほとんど同じ飛行機に見えた。(一世代前の四枚の翼の、音のうるさいエンジンを積んだ大きめの機体をした、太っちょの重ねプロペラの二人乗りのレシプロ機だった)
驚きのあまり、ハラはその場所を動かなくなった。
みんなハラが驚いてくれて満足そうな顔をしている。
「どうですか? すごいでしょ? 私の先輩にたいする憧れの気持ちを甘くみないでください。私は先輩の大ファンなんです。先輩の乗った飛行機の情報なんて公式に社会に公表されている情報は全部この頭の中に入っているんです」と生意気な顔をして雪風は言った。
「黄色は平和の色ですよね。この飛行機は先輩に私たちから贈ります。誕生日プレゼントですよ。先輩。もちろん司令官の許可もとってあります」雪風は言う。
ハラはゆっくりと歩いて黄色い飛行機のところまで移動する。
それから手でそっと飛行機の機体に触った。それから振り返って並んて立っている雪風と第一飛行機団のみんなを見て、ハラはその美しい瞳から透明な大粒の涙を流した。