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私が死んだら雪風は泣いてくれるかな? そんなことをハラは思った。孤独な夜の中で。凍えるような吹雪の中で。ハラは自分の死を連想する。私はいつか空の中で死ぬ。いつか必ず死ぬ。空はそんなに甘いところじゃ無い。(生き残ることはたぶんできないだろう)それは今日かもしれないし、明日かもしれない。
(本当にもうすぐ戦争が終わったら嬉しい。でもきっと私はそのとき、もう生きてはいないだろう)
私は誰に撃たれて死ぬんだろう? 赤い死神だろうか? それとも偶然の弾丸に被弾して戦場にでたばかりの新人飛行機乗りに撃墜されるのだろうか? それはまったくあり得ないことでは無い。『空の中ではなにが起きても不思議じゃ無い』。ハラ自身も初めての敵機の撃墜で向こう側のエースパイロットの妖精を撃ち落としている。あのときのハラと妖精では明らかに妖精のほうが飛行機乗りの腕は上だった。(もちろん、経験も)そう言うことも空の中では、戦場では起こり得るのだ。
「敵機は三機。動きから見て、新人飛行機乗りの乗る飛行機です」雪風は言う。
「了解。これより全機撃墜する。雪風はそのまま目標まで移動するように」ハラは言う。