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暗い雪の降る夜の中をハラは雪風と一緒に飛行している。雪風の飛行機乗りとしての腕は確かだった。ハラの飛行機の後ろにぴったりと雪風はついてくる。ハラは海面すれすれの位置を飛ぶ。その抵高度の高速飛行に雪風はついてくる。雪で視界はほとんど無い。ハラのことを信頼していたとしても、なかなかできる飛行では無い。
雪風にはなにかが見えている。
私には見えないなにかが。それが雪風の飛行機乗りとしての技術を支えている。それはいったいなんだろうとハラは思う。それを私も見てみたいと思った。(雪風はハラに憧れている、と言ってくれたけど、自分以上の飛行機乗りの才能をハラは雪風に感じていた)
「雪風。あなたは天才の飛行機乗りだね」ハラは言う。
「ありがとうございます。先輩」雪風から返事が返ってくる。
雪は強くなり続けて、今は吹雪となった。危険な天候ではあるけど、これは奇襲のチャンスでもある。エース機による少数精鋭の部隊で、向こう側のレーダーを破壊する。レーダーさえなくなれば、最終的には数でまさるこちら側の軍が勝つ。ハラは高度を少しだけ上げる。速度をあげて、目標地点まで最短距離を飛び続ける。
「敵機確認」
雪風が言う。
「こちらも確認した。戦闘に入る」高度を急上昇させながらハラは言った。