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「どうだった?」
「いい飛行機だと思う。気に入った」飛行機から降りながらハラは言った。
ハラは整備長のくれた炭酸の入った缶飲料をごくごくと飲んだ。
「相手機にエースパイロットがいた。みんな死んじゃった。この子じゃなかったら、たぶん私も死んでたと思う」ハラは言った。
「こちらでも確認してる。向こう側のエースはエースの中のエースだよ。よかったなハラ。お前がこちら側のエースの中のエースとして向こう側から認められた証拠だ。おめでとう」
「ありがとう」とからっぽになった空き缶を遠くにあるごみ箱に投げて捨てながらハラは言った。
ハラは司令官から呼び出しを受けて司令官室に向かった。
たばこを吸っていた司令官はハラに「本日から三日間。休暇を与える。基地から外出してもいい」とハラに言った。
ハラは敬礼しながら司令官に「了解しました」といい自分の部屋に帰った。
からっぽのなんにももののない冷たい金属の壁の自分の部屋。
ハラはとても疲れていたので、なにも考えることのできないまま、シャワーも浴びずにパイロット服を脱いで、毛布にくるまって下着姿で眠りについた。夢はなにも見なかった。