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しかし、相手機は落ちなかった。そのまま相手機は海に向かって加速していく。自由落下じゃない。海の上をすれすれに飛んで逃げるつもりだ。そうはさせない。ハラは相手機を追いかける。今日ここであいつを落とさないとあいつはこれから何十機と言うこちら側の飛行機を落とすはずだ。何人もの仲間の命が空の中に消えていくことになる。そんなことは絶対にさせない。ハラは飛行機を加速させる。しかし思ったよりも加速しない。どうして? ハラは思う。どうやら先ほどの強引な飛行にやはり無理があったのかもしれない。それはハラにもわかっている。でもそれくらいの無理をしないと倒せる相手ではなかったのだ。
さっき放った弾丸が当たっていなければ今ごろこちらがやられていたんだ。そんなことを思いやりながらハラは相手機を追いかけることをやめた。
「機体に異常あり。これより帰還する」報告を入れてから、ハラは飛行機を基地に向かって飛ばし始めた。基地からは「了解」と返事が返ってきたが僚機からは誰からも返事は返ってこなかった。