ぽち。
気がつくと、ぼくは門の前にいた。
「君は、ぽちくんだね?待ってたよ」
豪華な服を纏った白くて綺麗な人が頭を撫でてくれた。
「その姿だと意思の疎通ができないね。こうしよう」
綺麗な人はぼくの体を優しく撫でた。
すると、白く光った後、体が光の雫になった。
雫になったぼくはそこら辺を飛び回った。
自由に動ける!空も飛べそうだ。
そういえば、うちにいた空を飛ぶあの子もこんな気持ちなのかな。
あの子はにんげんの言葉を喋ったり、歌ったりして楽しそうだったな。
「じゃあ、ぽちくん、行こうか。おいで」
綺麗な人の後に続いて門をくぐる。
そこにはぼくと同じ光の雫がたくさん宙に浮いていた。
コツン!
ぼくは誰かとぶつかった。
「あっ!ごめんね。大丈夫?」
「てやんでぃっ!きをつけろぃっ!」
「あ、ごめんなさい」
ちょっと怖かった。
「ぽちくん、こっちおいで」
綺麗な人に呼ばれて中央の広場に通される。
「ぽちくん、ここはね死んでしまった者が来る場所なの」
「ああ、ぼく、死んじゃったんだね。なんか変だなあと思ってたんだ」
「今、ぽちくんはたましいの存在になったの。まず、わたしの質問に嘘はつかずに答えてね」
「はい」
「まず、あなたは生きていたとき、どんなことを学んだ?」
「ぼくは……いろんな人を笑顔にしました」
「ほう。それで?」
「ぼく自身が自由に生きることで、みんなが幸せに生きていけることを伝え続けました」
「素晴らしい」
綺麗な人は目を細めた。
「僕はにんげんってのが、自分で自分をいじめているのが不思議でした」
「ほう」
「きっとそれは、自分をたくさん傷つけることによって、誰かに傷つけられても辛くならない様に自分を守ってるんだって思いました」
「そうなんだね。じゃあ、次の質問。君はこれからどうしたい?また、生まれ変わる?それとも、別の次元に行く?」
「ぼくは……また、ご主人と遊びたい!」
綺麗な人はにっこり笑った。
「紹介が遅れたけどわたしは薬師如来。閻魔様だよ。今、あなたは審判にかけられていたの。地獄かあの世か生まれ変わるか」
「?」
「本当はわたしが審判をするわけじゃないの。自らが行き先を決めているのよ」
「???」
「難しい話をしちゃってごめんなさいね」
「???」
「最後に何か食べたいものはある?」
「いつものごはん!」
ぼくのまえにいつのまにかドッグフードが置かれていた。
急にお腹が空いて、目の前のものを夢中で食べる。
ああ。いつもの味だ。おいしいなあ。
「おいしい?」
「うん!とっても!」
「その、ご飯はね、生まれ変わることを選択した者が食べたら、生きていた頃の記憶を忘れてしまうの」
「そんな!ご主人のことも、忘れてしまうの?やだよ!」
「落ち着いて。生まれ変わったら、あなたのご主人のところに連れて行ってあげる。新しい体と心でいろんな体験ができるよ」
「ご主人のところでまた、楽しいことできる?」
「当然!!もっともっと楽しいことができるよ!」
そうなんだ!たのしみだなあ。
……あれ?なんだか眠くなってきちゃった。
「また、話を聞かせてね。バイバイ」
目を覚ますと、ぼくはにんげんにだっこされていた。
「この子、飼います!」
なんか、見覚えあるけど、誰だっけ?
ま。いっか。
終