9/96
8.0
取調室を出た仁科は、携帯端末で葛城優姫の状況はどうなっているのかと問い合わせ、画面を消してジャケットのポケットにしまい込む。
『おかわいそうに。あんな小さな子に、あそこまでする必要なんてないのではありませんか?』
インカムから突然聞こえた声に、はあとため息を吐いて仁科は肩を落とした。
「あの程度の虐待で根を上げるようなら、これから先に進む事は出来ないでしょうね」
腕組みをして主張の強い胸を少し持ち上げると、肩を回すように動かした。ふうと息を吐く。
『もう一人方、葛城 優姫は釈放しました。中々お転婆なお嬢様ですね』
「そうですか。では行村 愛海の監視をお願いします。危険な状態になる前に教えてください」
『かしこまりました、笑さま』
仁科は歩き出すと、携帯端末を取り出した。メール画面を開きハートマークの連絡先へメッセージを送信する。
金糸雀の人形を捕まえた。飼い主を探せ。
送信されたデータは自動的に削除される。誰に送ったのか記録はどこにも残らない。