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「いや、たしかにな! でもな!?」
綿貫が叫んだ。両脇に抱えられる様に愛海と名も知らぬ少女がいる。
4人が向かっているのは、中央放送室。
この巨大な学校には3つの放送室がある。職員室の隣にある中央放送室は学校全体の放送通信を統括するもので、そこへ向かっていた。
「これしかないだろ? オレだって不本意だ!」
言いながら彼女は3人の男子生徒の中央の懐に飛び込みながら脇腹に拳を打ち込み、サイドステップを踏み、右の一人の腕をつかんで、左の一人に当たるように投げ飛ばした。
それと並行して飛来した火の粉を、横目で一瞬だけ見ただけで氷の結晶を射出して一つずつ正確に撃ち落としていく。
学園のそこかしこで先ほどから@MMの歌が流れ続けていた。窓には@MMが自分を刺した愛海を捕まえてほしいと嘆願する映像が映されている。
それで生徒はドラッグによって興奮状態になりながら追いかけてくる。
そしてそのハイになった生徒たちは、構わず電子攻撃を仕掛けてくる。先ほどの火の粉もそうだ。
ただの幻想と甘く見ることはできない。それらは直撃すれば、BCCの演算に確実に支障を来たし、最終的には蓄積疲労で演算機能が低下してしまう。無視して捨て置けば不要な処理によって処理速度の低下が考えられる。ましてその中にウイルスが混入していれば、余計に始末が悪い。面倒でもすべて対抗していく必要がある。
「ゾンビパニックみたいだな!」
吐き捨てるように言って、優姫はまたも突っ込んできた男子生徒の足を箒で払った。
「ゾンビなら走らないし、ECも仕掛けてこないから楽だったのにな!」
綿貫の茶々にも、優姫はホントになと呟いて走り続ける。
攻撃は止まない。6人1チームとなって、3人が物理攻撃。3人が電子攻撃を行う。
統率のとれた敵は、整列して襲ってくる。少なくともこれが無秩序でただ襲ってくるだけの本当のゾンビパニックであれば、どれだけ楽な事かと嘆息した。
「誰かが外から操っているのか……?」
興奮状態で攻撃してくるのに、あまりに秩序が保たれている。そう予想を立てるには十分だ。
廊下を濁流が、鉄砲水となって押し寄せてきた。合成画像とわかっていつつも、脳は誤認し体は咄嗟に逃げようとした。
「なんだよそりゃ!?」
そんな大規模攻撃、おそらく電子戦兵器《ECW》『水』による質量攻撃だが、普通のただの学生ができるレベルではない。情報量の多さからほとんどノアに近いと行っていいレベルの攻撃だった。
「どうな、って!」
叫んだ綿貫はそれでも逃げる前に両隣の小さな少女二人をかばおうとしていた。
「失せろ!」
優姫が叫んだ瞬間、彼女から雷光が真横に走り水を焼いた。濁流は割れ、水は干上がる。無意味なバグデータの奔流に過ぎない『水』の攻撃に対し、データを破壊するのが目的の『雷』を当て粉砕した。
優姫の放った『雷』の影響で、濁流に潜んでいた3人は余波でBCC演算速度が低下してその場で棒立ちになっている。




