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それも落ちたのは自分がいない、分身だけのエリア。その結果に驚いた愛海。
「そりゃ、シャトルの飛び方見ればわかるよ。それに、分身しても急激には動けないでしょう?」
さも当然と言いのけられ、愛海はその場に座り込んだ。戦術起動が強制停止し、分身が消える。その様子を見ていたクラスメイトの少女たちはすごーと感嘆の声を漏らしている。
「お、行村。大丈夫か? 心拍数がわりと危険域一歩手前だぞ?」
近くにいた五十嵐がすぐに愛海の肩に手を当て、生命信号を確認する。
確認が終わると、相手をしていた少女が愛海を軽々と抱き上げてコートを出た。
「軽いだろうとは思ってたけど、本当に軽いなぁ」
しみじみ感心する彼女だが、愛海はそれどころではない。今にも口からあらゆるものを吐き出して倒れそうだ。
「はい、冷却。これ飲んで」
冷やされたタオルを首にかけられ、水筒を渡される。からからに乾いた体は何も考えずに水筒の飲み口に吸い付いた。
給水と冷却でだいぶ落ち着いた愛海は、息を吐いて横でしゃがんで見ている少女を見た。
「どう? 落ち着いた?」
「う、うん。ありがと……」
よしよしとなぜか頭を撫で始めた少女に、余計に困惑する。
危害を加えるわけではないようなので、愛海は特に拒絶はしなかった。
「うーん。葛城が面倒みてる雰囲気だから、なんとなく気になったんだけど、たしかにこれは面倒見たくなる」
なるほどなぁとつぶやいているが、それがどいう意味なのか、愛海はまるで分っていない。
とりあえず首を傾げ、手に持っていた水筒を返す。大きく重いので両手で持っていたそれを見て、少女はほうほうとつぶやいた。
「なるほどなるほど……」
神妙な顔でうなずいていると、ほかの女子たちも集まってきた。
「なにがなるほどか。変態二号機」
一人がちゃちゃを入れた。それに対していやいやと首を横に振る少女。
「葛城みたいな真正と一緒にされちゃ困る。こっちは普通の女子高生で普通の可愛いもの好きだから」
何を言っているんだと顔に貼り付けた少女だが、けたけたと周りの女子たちは笑った。
「変態は自分が変態だ、っていう自覚がないんだよ。知ってた?」
「あれもそうじゃん」
ぐっと親指で差された優姫。高跳びの選手として全国大会へ出てもおかしくない跳躍を見せつけてゴールを決めていた。
「いや、あれとは違う」
半ば必死になってきたところで、居心地の悪さを感じ始めた愛海がきょろきょろ周囲を見始める。
「ってか、行村さん。前髪邪魔じゃない? さっきも気にしてたみたいだし」
「縛っちゃえよ。はいゴム」
「どれどれあたしが」
そう言って一人の女子が後ろからてきぱきと愛海の前髪を縛り上げた。
それだけでだいぶ煩わしいものが消えたが、同時に顔が見られるという気恥ずかしさと、自分の内心が悟られているのではないかという不安が芽生える。
「うん、こっちの方がいいじゃない?」
「だね」
「ってか、誰かに似てる」
だれだっけと女子つぶやくと、たしかにと顔を覗きだす。




