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「じゃ、わたしはネットで調べる」
さも当然と言うが、優姫はにっこり笑みを浮かべた。
「愛海もいくよ」
「え、やだ」
即答する愛海。さも当然といいのけ、なぜ自分も行かなければいけないと顔に書いていた。
そもそも愛海は不登校児だ。定期的に届く課題だけ書いて提出しているだけで、@MMとして活動を始めてからは一度も登校していない。今更現実の学校に登校する意味もないとすら思っていた。
「だめ。いくよ」
有無を言わさない優姫。
「やだ。外出ない」
いくいかないの問答を1時間ほど続け、根負けした愛海は頬を膨らませ、口をへの字に曲げて顔全体で不機嫌を表す。
最悪の事態は考えておいて損はないと投校するまでの時間で、いざという時の連絡手段を考案し、非常時用の連絡回線を構築しておく。さらにAIを仮想的に構築しネット上に配置しておくのも忘れない。ここまでの工程を優姫がほぼ一人で行った。その手際ややり口に年齢からしても異常である。
「なんか手慣れすぎてないか?」
思わず口から出た愛海。それに優姫はいやいやと首を振った。
「何かあった時に、女の子を悲しませたくない。オレが準備できるなら、手間は惜しまない」
その言い様に愛海は顔を顰めた。
「どーきが不純……。もしかして、お前、女タラシか?」
「え? いやいや。女の子は守るものだろ?」
「だめだこいつ……」
何を当然な事をという優姫に、肩をすくめて嘆息した。
それから身支度を整え家を出ると、マンションのすぐ近くのバス停から乗り合いバスに乗り込んだ。
「制服似合ってるじゃん」
車両の後部側の2人席に座れた二人は小声で会話していた。といってもニヤニヤと不審な笑みを浮かべる優姫がほとんど一方的にだったが。
「にあってない」
愛海の服の上に表示された3ヶ月ぶりの制服は、優姫が言うほど似合ってはいなかった。ブレザータイプの紺色の上着と、赤いチェックのプリーツ。校則に従ったバスターブラウンカラーのブラウスに、緋色のリボンタイ。正直に云えばダサいとしか言いようがなかった。
「でもせっかくだしなぁ」
優姫はつぶやいて、フェイストップに制服改造パッチリストを表示する。
「な、なにするんだ!?」
言いようのない身の危険を感じた愛海は、身を引いて窓にぴったりと貼りついた。防護壁の強化を施すのも忘れない。
「どうせ可愛いんだから、制服も純正じゃなくて、改造しないとなぁ、って」
そして愛海の送通信領域へハッキングした優姫は、勝手に制服に改造パッチを貼り付けていく。瞬く間にスカートの丈は短くなり、悩んだ結果厚手のタイツへ変更。ブレザーのウエストは絞られ、ブラウスはイタリアンカラーへ変更。若干袖が長いカーディガンも追加された。
「よしよし。いいぞ、いいぞ」
楽しそうに次々と加わっていくが、そこで愛海は防護壁を強化。強制変更を止めた。
「あ、あと、ネイルと、それから」
目の色を変えて、若干上気した顔の優姫。
涙目になった愛海は身を抱いて少しでも距離を取ろうと、身をよじる。
「だまれへんたい!」
「へ、へんた……ッ!?」
面と向かって言われた言葉に、ショックを隠し切れない優姫。固まる彼女をよそに顔を背け外を見る。




