歌を、歌え
2043年。
この国の約9割の国民には、脳内に人工器官を埋め込んでいた。
電子的に各人が接続され、現実世界上に仮想現実を同時に投影できるようになった世界。
誰もが”考えただけ”で情報にアクセスでき、現実と同時に仮想世界を”観る”事ができるようになった。
ゴーグルを付けずとも、肉眼で拡張現実を認識できるようになり、世界は飛躍的な進化を遂げた。
道に迷う事はない。欲しい情報はその瞬間に手に入れられる。
混雑する事はない。誰もが最適化されたルート、情報を共有できる。
現実には不可能な物でも現実と仮想が二重写しになった世界では、すべて可能。
誰もが情報発信者で、受信者、中継者でありえる。
夢のような人工脳器官を、『BCC』と呼んだ。
誰もが、この夢の装置の恩恵を甘受する一方で、人知れずその弊害は生まれていた。
妄想を現実にできるようになった世界で生まれた、一人の歌姫。
妄想を現実にした世界を守る決意をする、一人の魔女。
妄想され現実にした自分の理想を貫く、一人の王子。
3人の少女の”世界”が電子世界と現実世界の狭間で起きた事件を切っ掛けに交差を始めた。