第3話:違和感
7月20日、夏休みが始まりそして秋にむけての練習が始まる。
−−−練習前の部室
宮本
「あの……キャプテン!」
酒井を呼び止めた宮本。
酒井
「おっ………もう大丈夫なんだな?それじゃ練習行くぞ」
酒井が部室のドアに手をかけた。
宮本
「一昨日はすいませんでした!!」
頭を下げる宮本を見て驚きながら
酒井
「なんだよ、そんな事気にしてたのか……大丈夫だよ!キャプテンたるもの部員を気遣うのは当然だ!……さっ今度こそ練習だぞ。」
宮本
「あ……はい!」
−−−−
高橋
「おいおい、もうこのぐらいで良くないか?」
宮本
「あと100球!!」
高橋
「お前……あと100球っていってもう500球投げてるぞ!……ていうかもう練習も終わるしさっ。」
宮本
「頼むっ!」
ポンッ
中林
「やめときなって!体こわしたら元も子もないよ!」
そう言って中林が宮本の肩に手を置いた。
宮本
「………ダメなんだ……」
高橋
「なんだよ、いきなり?」
中林
「何が駄目なんだい?」
宮本
「今のままじゃまたあいつに打たれちまう……」
高橋
「待て待て!勉の言うようにケガしないうちに切り上げとけって!」
宮本
「うー……わかったよ。」
高橋
(ホッ……宮本は言い出すとキリがないからなぁ……)
宮本
「よしっあと100球!」
高橋&中林
(やっぱり……)
高橋
「わかったわかった!これが絶対ラストだからな!!」
宮本
「サンキュー!」
中林
「じゃあ僕も付き合おうかな。」
そう言ってバッターボックスに中林が立つ。
中林
「フリーバッティングってことでよろしく。」
宮本
「勉もサンキュー!……じゃ行くぜ!」
−−−−−−
〜54球目〜
宮本
(やっぱ勉はすごいな。空振りがなかなか取れない……よし………ここはスライダーだ!)
宮本がサインに首を振った。
高橋
(ん?……なんでフリーバッティングで首振るんだよ……これか?)
さすが親友、宮本が投げたいスライダーのサインを出した。
宮本
(わかってるじゃんか〜)
首を縦に振り、投球動作に入る。
球が手から離れる瞬間、
ピリッ……
宮本
(!?)
球はすっぽ抜けて内角−−中林の頭部めがけて一直線に向かっていく!
中林
「うわっ!?」
素早くかがんで避けることができた。
宮本
「大丈夫か!?」
中林
「うん……宮本こそどうしたの?」
宮本
「ゴメン、手が滑っちまって。」
中林
「まだ投げるの?」
もちろん中林の言葉には
「そんなに握力が無くなってきたのに。」と続く。それに気づいたかどうかは定かではないが、
宮本
「うーん……今日はもう止めとくよ……」
珍しく意見を聞いた宮本であった。
高橋
「……」
〜宮本の部屋〜
宮本
(さっきのひじに感じたのは何だったんだろう……?)
宮本はベッドに座りボールを握っている。
宮本
(確か……スライダーを投げようとした時だったよな………ちょっとフォームだけ…)
ボールを握り直し、投球動作に入った……
ズキンッ
宮本
「う゛っ!?」
ポスッ
手から離れた球がベッドに落ちた。
宮本
「………」
−−−−−−−
〜翌日〜
ピンポーン♪
宮本と一緒に学校へ行くためにいつも通りチャイムを鳴らした。小、中学校ともう何百何千と繰り返してきた習慣である。
高橋
「宮本〜起きてるか〜?」
………
誰も出ない。
高橋
「寝坊か〜?………も一回押……」
高橋がもう一度チャイムを鳴らそうとした時、不意にドアが開いた。
ガチャ……
高橋
「うわっ!?……なんだそのカッコ?寝坊!?」
パジャマ姿に寝癖全開で宮本が出てきた。
宮本
「ゴメン、今日ちょっと熱っぽいから休むわ。」
高橋
「あーそうか……わかった。キャプテンとかにちゃんと言っとくよ。こじらすなよ〜。」
宮本
「サンキュー、練習頑張れよ。」
高橋
「当たり前だろ!…じゃあな。」
宮本
「おう。」
バタン……
−−−−−−
時刻は午前10時12分。宮本は人目を気にしつつある場所へと向かっていた。
宮本
「久し振りにきたな……原田医院。」
宮本はひじに感じた違和感−−−いや、刺すような痛みを診てもらうために病院に来たのだ。
ガチャ
宮本
(よかった…平日の昼前だからさすがに誰もいないか……)
看護婦さん
「宮本くーん。」
宮本は診察室のドアを開けた。
宮本
「こんにちは。」
原田
「こんにちは、今日は練習大丈夫なのかい?」
宮本
「あ……大丈夫です。」
原田
「それで今日はどういう?」
宮本
「えと……昨日投げ込みをしていてスライダーを投げようとした時、ひじが痛くなって………」
原田
「常に痛むのかい?」
宮本
「いえ、今は特に…」
原田
「ちょっと触診するね。」
−−原田先生は宮本の右腕を診終えた。
宮本
「……でどうなんですか?」
原田
「レントゲンを撮りたいんだが、いいかな?」
原田の深刻そうな表情を見て少し不安になった。
宮本
「は、はい…」
−−−−−−
原田
「それじゃあ今日の午後また来て下さい。」
宮本
「わかりました……」
−−−−−−−−
宮本
「…………………」
(レントゲン撮ったり、また来てくださいとか、ヤバいのかな……?)
ベッドに寝転がり考えていた。
宮本
「大丈夫だよな……?」
それは誰に宛てた言葉でもなく、しかし自分を安心させることもできなかった。
−−−−−−
時計の針は3時を指している。
宮本
「もう行かなきゃな。」
ぼーっとしているとすぐに時間が経つなと思った。
そして宮本は玄関のドアを開け、病院に向かった。
Character Profile3
酒井純平
1991年5月25日生まれ
左投げ左打ち
ポジション セカンド
背番号 4
埼玉県立竜生高等学校
ミート力C
パワーA
走力D
肩力B
守備力C
メンタルB
竜生高校野球部を支えるキャプテンで主砲。人望が厚く面倒見がいいのでまさしくキャプテン!と言った感じだ。