自己紹介は、突然に!
よろしくお願い致します。
第九話 自己紹介は、突然に!
ずいぶん遅くなってしまった、と、ジャンはアズビー商会の馬車の中で公爵家を目指している、久しぶりに帰った末っ子を母が離さず、夕食を食べ、風呂まで入って来てしまった、こんな時間だ、今日は大賢者に合う事は出来ないであろう、
公爵家の裏門に馬車を止め、
「ありがとう、皆によろしく、」
と、馬車の馭者に伝えて、裏門の端にある騎士の詰所に声をかけて、使用人寮に帰って行く、
使用人寮に入ると、食堂の所に幕がかかっていて、幕には、改装中、ご迷惑ををお掛けしますと、描かれていた、
改装するとは聞いてなかったな、と思いつつ、しまった!自宅でトイレに行っておくのを忘れた、自分が今まで掃除をしていて、言うのもなんだが、本当に臭くて、汚い、食堂ではなく、トイレを改装して欲しい物だ、
と、ため息をつきながら、トイレに入って眩しさに驚く、暗い廊下から入ったトイレは、昼間の様に明るく、目が慣れて中を見て驚く、御屋敷にも無い見事な化粧台の鏡、磨き上げられた石の床、悪臭どころか、仄かに香る花の良い香り、個室を見て、
こ、これは!父から聞いた、大賢者の所の座るトイレではないのか?
慌てて個室の中に入ると、壁に使用法が絵と文字で、丁寧に書いてあり、最後に、このトイレはロバート様が寄贈された、トイレですと、書いてあり、便座にも、寄贈ロバート様と、入っている、父がいつも羨ましがっていたトイレを使ってみると、納得、
父が羨ましがるわけだ、なんとも良い座り心地、更にお尻を洗ってくれるのだ、
もう他のトイレを使う事が出来ないな、
次に実家に帰った時に、父に自慢をしよう。
エルルは改装をし終えると、明日の朝食の下準備を済ませて、たれ幕を外していると、イオが、
「エルルさん、一緒にお風呂にって、何ですかここ、改装中って書いてありましたけど、
うわぁー、凄く素敵な机や椅子、奥はカウンターの向こうに、見た事ないなんだかピカピカの厨房が見えてますよ、カウンターの横の大きなタンスの様な物は何ですか?」
「イオさんだけに先に教えてあげます、あれは冷蔵庫と言って、物を冷やしたり、凍らせたりする魔道具です、明日の夕食の時に付けるプリンは、この中で冷やして置くんですよ、」
「わぁ!エルルさん、私、楽しみ過ぎて、今晩眠れなくなっちゃいそうです、」
「じゃぁそんなイオさんにもう一つ、明日の朝の食事は、二種類あるメニューのどちらかを、選択してもらいます、メニューは、甘ぁーいパンケーキか、肉汁いっぱいの腸詰パンのどちらかですよ、」
と、イオを見ると、口が半開きになって、よだれが垂れそうだよ、、
「エルルさん、朝まで悩んじゃうじゃないですか、」
エルルは、笑いながら、
「イオさん、さあ、お風呂に行きますよ、」
と、食堂の灯りを消して、お風呂に向う、二人はまだ気付いていない、
暗い廊下を歩く二人をこっそり付けている者がいる事に。
エルル達が女性風呂の清掃を終わらせると、一度部屋に戻ったイオが、部屋から、バスセットを抱えて男性風呂に入って来る、
エルルがイオに、
「イオさん、僕は脱衣所の掃除と、ロバートさんのバスローブをクリーンの魔法で綺麗にしますので、お先ににどうぞ、」
「良いんですか、エルルさん、ありがとうございます、」
と言って浴室へ入って行き、案の定かなり待たされ、バスローブ姿で出て来た、イオに変わって、エルルが浴室に入る、
エルルがバスローブ姿で浴室から出てくると、アニー先輩と、イオさんが侍女長の前で正座をしていた、一体、何があった?
侍女長が、
「エルル、貴方もここに座りなさい、」
エルルは黙って頷き、イオの隣で正座をする、
「先ず、イオと、アニーは何故男性風呂にいるのかしら?」
アニーが、
「偶然イオが男性風呂に入る所を見てしまい、気になって入りました、」
「イオは何故男性風呂で入浴しているの?」
エルルが、
「侍女長、ぼくと、イオさん二人で、男性風呂、と女性風呂を掃除しているのですが、
先に大きくて、大変な女性風呂を掃除して、その後男性風呂を掃除します、女性のイオさんが、入浴を済ませた後に、大きなお風呂や、脱衣所を掃除するのは、かわいそうだと思い、二人で女性風呂の清掃を先に済ませて、男性風呂で入浴をした後、小さい男性風呂を清掃しているのです、」
侍女長は、はぁーっとため息をつき、
「イオ、そうなのですか?」
「はい、エルルさんの言う通りです、今日もエルルさんと二人で女性風呂を清掃して、その後、私が先に入浴を済ませた所です、」
「確かに二人が女性風呂を掃除するようになってから、見違えるほどお風呂が綺麗にになっているわね、」
エルルが、
「侍女長、あの、イオさんと、僕、髪を乾かさないと、風邪をひいてしまいます、髪を乾かしても、良いですか?」
「ええ、ごめんなさい、乾かしてちょうだい、ねえ、エルル少し男性風呂を見せて貰っても良いかしら、」
アニー先輩が、
「侍女長、ずるい、私も見たいです、」
エルルは立ち上がり、
「ええ、侍女長構いませんよ、じゃ、イオさん、髪を乾かしちゃいましょう、」
と、イオと二人で化粧台の前で髪を魔導ドライヤーを使って乾かす、
侍女長と、アニー先輩は、お風呂の中を見て、あんぐり口を開けている、
アニー先輩は、二人並んで髪を乾かす姿にも一瞬固まったが、すぐに、
「エルル君、私、今からこのお風呂に入ってもいい?」
「ええ、男性は、四人しか居ませんから、もう誰も入らないと、思いますので、構いませんよ、」
と、言っている途中から、アニー先輩は、服を脱ぎ出し、あっという間に、すっぽんぽんになり、浴室へ入っていき、侍女長も、
「エルル、私も入ってくるわ、」
と、アニー先輩を追って、浴室に入って行く、またまた、なかなか出て来ない二人、
アニー先輩が、浴室から、
「ねーえっ、エルル君、エルル君達が着ているそのローブはどうしたの?ロバートさんの名前が入ったローブもかかっていたけれど、」
「アニー先輩、浴室に置いてある、石鹸やシャンプー、トリートメントなどと、今なら、洗面器と、バスローブに名前を入れて、セットで銀貨七枚ですよ、」
「頂くわ!」
っと、先に返したのは侍女長だった、イオさんに二人の名前入りバスローブを届けて貰い、エルルが侍女長、イオさんがアニー先輩の髪を乾かし、アニー先輩が、
「侍女長、見て下さい、髪に、こんなに艶があります、それに、ごわごわしていた髪が、さらさらになって、凄く良い香りが、します、このお風呂、御屋敷のお風呂より、凄いですよね、あっ、侍女長、ズルい!エルル君が髪を乾かすと、髪の艶が全然違いますよ、」
エルルが笑いながら、
「はい、ちょっとだけズルして、乾かしながら魔法で、」
「イオ、貴女の髪が見違えるほど綺麗になったのは、エルル君に髪を乾かして、貰ったからなのね、エルル君、私の髪も乾かして!」
侍女長が、
「アニー、貴女の髪も十分綺麗よ、それに今は、私の髪を整えて貰っているから、ダメよ、でも、このバスローブは、最高ね、
そう言えば、貴女達、良い香りが昨日から、してたのだけど、アニーがお風呂のことを知らなかったと、いう事は、お風呂で無く、執事長、ロバート、後、貴女達の共通点は、男性トイレね、」
侍女長の鋭い突っ込みに、アニーと、イオは顔を反らせる、
侍女長は、悪い笑顔で、
「良いわ、この後、男性トイレに行ってみるわ、」
アニーと、イオが同時に侍女長にすがりついて、
「侍女長、男性トイレの事は、秘密にして下さい、」
と、二人で侍女長にしがみ付き、いやいやをしている、エルルが、
「侍女長、女性の皆さんに、男性トイレを見て頂いて、皆さんが改装を希望されましたら、僕が改装しますよ、ただし、ロバートさんの様に、便座ひとつにつき、魔石を火、水、風の三つ用意して下さい、」
「分かったわ、先ず私が使って見て、皆と相談するわ、」
「了解です、あと、侍女長、アニー先輩、これお風呂セットです、」
と、洗面器に入ったお風呂セットを渡すと、アニー先輩が、
「エルル君、間違っちゃうといけないから、全部に名前を入れてくれない、」
「分かりました石鹸以外は名前を入れます、イオさん、イオさんの物にも名前を入れますね、」
「はい、ありがとうございます、エルルさん、」
「では、皆さん、僕が掃除をしておきますので、後はお任せ下さい、」
と伝え、皆が部屋に戻ったあと、一瞬で清掃を終わらせて、部屋に戻った。
真夜中、エルルの部屋の扉が、強くノックされ、
「エルル君、エルル君、起きて!」
エルルは直ぐにベットから、跳び起きドアを開くと、ミオン先輩が、
「エルル君、直ぐに御屋敷に来て、一の姫様が、大変なの、」
「分かりました、直ぐににいきます、ミオン先輩、ソフィア先輩にも来て貰う様に連絡をして下さい、」
「今、一緒に夜勤をしてた子が、呼びに行ってるわ、ソフィア先輩、宮廷医師様の娘様だもの、」
エルルは、パジャマの上から、白衣を羽織り、眼鏡をかけ、鞄を持つと、走るミオン先輩の後を追った、使用人用の入り口から、裏階段を掛けて、廊下に出ると、夜勤のメイドさんが、暗がりにカンテラの様な魔道具を持って、廊下に出ている、ミオン先輩が、
「エルル君、あの部屋よ、」
と、声をかけながら、部屋に入って行く、部屋は、広くベットの脇の照明魔道具がぼんやり光っていて、ベットの脇で、男性と、女性が、一生懸命に声をかけている、
「ライト!」
エルルが唱えると、複数の光の球体が、現れ、部屋の中が、昼の様に明るくなる、ベットの上で苦しそうに丸まっている女性が見え、隣に母親らしき女性と、父親らしき男性が、一生懸命に声をかけている、
エルルが、ベットに駆け寄り、お腹を抑えて丸まっている女性に、
「大丈夫だよ、直ぐに楽になるからね、」
女性の鼻元で小瓶を開くと、女性は、すうっと、眠りに落ちる、母親らしき女性が、驚いてこちらを見ている、
「大丈夫です、眠って頂きました、私の名前は、エルル・ルコル、執事見習いで、ございます、」
後ろから、ジャージ姿のソフィア先輩が入って来て、
「エルル君、お待たせ、姫様は、」
ベットの脇で、ポカンとしていた男性が、
「ソフィア、彼女は?」
ソフィアは、えっ、と言う顔をして、
「主人様、執事見習いのエルルですが、」
エルルが、主人だと言う男性に、
「エルルです、ご挨拶は後ほど、姫様は、危険な状態です、姫様は虫垂炎になってみえます、治癒魔法で治しても直ぐにより悪い状態で、再発します、悪い所の摘出手術が、必要です、」
エルルが明るくなった部屋を見ると、執事長や、侍女長、ロバートさん達も入り口の所に立っている、エルルが、
「執事長、これより姫様の処置をしますので、この部屋より退出して下さい、」
「分かった、エルル、姫様を頼んだぞ、私達は、隣の控え室で待機している、何かあったら、呼んでくれ、」
と、主人様に一礼して皆部屋から出て行く、
エルルは主人様を真っ直ぐににみて、
「主人様、姫様の手術のご許可をお願いします、姫様の命に関わります、」
「君はナターシャを救う事が出来るのか、」
エルルは、主人に頷き、
「必ずお救いいたします、できましたら、退出して頂きたいのですが、」
「私は残らせて、娘から、離れたく無いわ、」
ソフィア先輩が、
「奥様、エルルが姫様を必ず救ってくれます、あの騎士団長の肩を治した、凄腕のお医者様です、」
「ですが、」
「マリー、私が一部始終見届けよう、皆と一緒に待っていてくれ、」
「分かりました、先生、お願いします、」
と、頭を下げ、奥様は部屋から出ていかれた。
「では、ソフィア先輩、姫様の服を脱がせて、これを右足の付け根のあたりに合わせて被せて下さい、」
「分かったわ、昨日の手術の時の様にね、」
「はい、お願いします、主人様、ソフィア先輩に手術前の処置をして貰いますので、一旦こちらに、」
と、姫様が見えない窓辺まで来ると、
「エルル、私は、アルク・フランツ・フォン・ギルガスだ、父が後見人になったと言う事は、君は私の妹だ、男と聞いていたのだが、兄と呼んでくれ、」
エルルは内心、お前もか!親子揃って、もうっ、
「エルル、準備が出来たわ、」
エルルは素早く振り返って、ベットの脇に立ち、シーツの穴の開いている部分に無菌のドームを作り、中で姫様の脚の付け根の部分に針の付いた小瓶をさし、耳を裂く様な高い音がする小さな薄い刃のナイフで、下腹部を開き、素早く幹部を切り取り、治癒魔法で、切った所も、跡形も無く治していく、
エルルは主人様に、
「主人様、手術は、成功しました、もう大丈夫です、」
主人様は先程まであんなに苦しそうだった姫様の顔が、今は穏やかに寝息をたてて、いるのを見て、
「我が妹よ、ありがとう、早速妻に伝えて来る、」
と、主人様は部屋を飛び出していく、
「ソフィア先輩、もう大丈夫ですが、姫様に付いていて貰えますか、一応朝、診察します、後、姫様のオナラが出たら食事を取っても良いですが、朝食は、私が用意しましょう、姫様も男が寝室にずっといるのは、耐えられないと、思います、」
「分かったわ、姫様のオナラに注意していれば良いのね、後、私の朝ごはん、ちゃんと取っておいてね、」
「了解です!」
そこに、主人様と、奥様が、入って来て、奥様は、すやすや眠る姫様を見て、涙を、流している、エルルは、主人様に一礼して部屋から出て、皆がいる控え室に向かった、
控え室に入ると、執事長が、
「エルル、お疲れ様、主人様よりもう大丈夫だと聞いたが、」
「はい、無事手術も終わり、一応ソフィア先輩に朝まで付いていて貰います、朝、僕が、もう一度診察をします、侍女長、ソフィア先輩のシフトの変更を、お願いします、」
「分かったわ、じゃ、夜勤では、ない者は戻りなさい、」
エルルは、使用人寮に戻りながら、もうすぐ夜明けだよ、サム来てるじゃないかな、
案の定、サムは、カウンターの中の調理場で、固まっていた、
「サム、おはよう、」
「エ、エルル様、食堂がっ、」
「うん、サム、これからここが、サムの職場だよ、昨晩朝食の下準備をしておいたから、はい、これ今日一日の献立レシピね、今着替えて来るから、待ってて、」
と、エルルは部屋にもどり、白のワイシャツに、黒の細身のズボンを履き、腰に濃い茶色の前掛けを付けて厨房に入る、
「サム、お待たせ、この鍋に入ってる物が、料理長が用意してくれた具材?」
「へい、大変お優しい方で、ほとんど下処理をして下さっています、お昼と、夜にあっしが、頂きに行きます、」
「じゃ、サムは、スープをお願い、具材はこれと、これで、後の食材は冷蔵庫に入れておいて、あと、味つけは僕がしても良いかな?」
「分かりやした、ですがスープの具材が野菜だけってのは、良いんですかい、後、冷蔵庫とはなんですかい?」
エルルは厨房の壁側に置いてある銀の扉の一つを開き、
「サム、ここに食材を入れておけば、多少日持ちがして、悪くならないから、お肉や、パンだったら、下の扉に入れて凍らせれば、かなり保つよ、」
サムがエルルに言われた通りに冷蔵庫に食材を入れてると、
「ひゃ、冷てぇ、エルル様凄い魔道具ですね、それにこの厨房、御屋敷の厨房よりも良い物ばかりですぜい、」
「美味しい料理を、作りたかったら、最低でもこのレベルのキッチンが、必要だよ、今日の朝と、お昼のメニューの献立のレシピは読んでくれた?下準備は、昨晩ほとんどしてあるから、スープを火にかけたら、手伝って、あと、スープの具材は、いつもより細かくカットしてね、」
「分かりやした、早速スープに取り掛かりやす、」
エルルは、冷蔵庫より、パンケーキの元を取り出し、次々と焼き上げて行き、自家製ジューシィ腸詰めも、平行して焼いていく、こちらをチラチラ見ているサムのお腹かが、凄い音で鳴ってるよ、
エルルはトレーを二つ並べて、カウンターにパンケーキセットと、特製腸詰ホットドッグセットを作り、丁寧にに、説明も書いておいた。
「エルル様、美味そうですね、」
エルルは、焼きあがっていた大きな腸詰の一つをサムの口に入れる、
「うっ、うめぇーこんなうめぇ腸詰、食べた事が、ありやせん、」
エルルも、腸詰をひょいとつかみ、口に入れ、うん、我ながら良く出来てる、
「サム、今朝渡したレシピに全て書いてあるからね、あと、ここにある器具の使い方は、
ちゃんと書いてあるから、わからなかったら聞いてね、」
サムは目を輝かせて、
「へい、頑張りまさぁ、お師匠様、で、皆さん今日は、遅いですね、いつもだったら、メイド様が、集まってまさぁ、」
その頃男性トイレでは、トイレから出て来たイオとアニーが、ローカに並ぶ先輩達を見て、
「イオ、早めにに来て良かったわね、」
「はい、私もこうなるんじゃないかと思っていました、アニー先輩、早く食堂に行きましょう、私、昨晩エルルさんから、朝食のメニューを聞いて待ちきれなくって、」
「イオ、早く行っても、食べられるのは朝礼が終わった後よ、」
ジャンが、着替えを済ませてトイレに向かうと、トイレの入り口から、ローカまでメイドが並んでいる、ジャンは同期のメイドを見つけ、
「リナ、スゥー、これは何だい、」
二人が振り向き、
「ジャン、おはよう、どうやら男性トイレの秘密が先輩達にバレた見たいなのよ、」
「僕も昨晩実家から帰って来て驚いたよ、で、リナ、スゥー、新人のエルル君はどんな子だった?」
スゥーが、悪戯っぽい笑顔で
「私ね、昨日までエルル君と、一緒に騎士団本部に出向してたの、向こうで悪い所がある騎士さんを、全て治療して、騎士さんから、女神様って言われてたわ、」
話していたジャン達の、後ろから、
「おい、ジャン、なぜ男性トイレに皆並んでいる?」
「おはようございます、ロバートさん、僕にはさっぱり、」
スゥーが、
「先輩達に、男性トイレの事を知られちゃった見たいなんです、」
ロバートが、頭が痛いと、眉間に手をあてて、いると、後ろから、
「何を、しておるか!メイドは女子トイレに戻れ、早くしないと、エルルが作った朝食が、食べられなくなるぞ!」
と、執事長に一括され、メイド達は慌てて、女子トイレに駆け込んで行った。
アニー達が食堂に入って来て、
「ねぇ、イオ、ここ食堂だよね?」
「ええ、私は昨晩、エルルさんに見せて貰ったので、」
固まっているアニーに、カウンターの奥から、エルルが、
「おはようございます、アニー先輩、皆さん今日は遅いですね、朝ごはんの準備は出来てますよ、」
イオがカウンターの前にに走って来て、
「エルルさん、今日の朝ごはんはって、これですか?」
「イオ、貴女、慌てすぎよ、エルル君、皆、男性トイレの前で並んでいるわ、って、これが今日の朝食?えっ?どちらか選ぶの?」
「エルルさん、こんなの酷いです、選べませんよ、どちらも食べたいです!」
「大丈夫ですよ、イオさん、昼食も同じメニューなので、」
アニーと、イオがどちらにするかを、話していると、メイドさん達が入って来て、食堂を見てビックリ、朝食の見本を見て、またビックリ、執事長と、侍女長が最後に入って来て、
「皆、おはよう、皆も色々驚いていると思うが、私も驚いている、まず、昨晩の一の姫様の件、エルル、ご苦労様、知らない者もいると思うが、昨晩一の姫様が体調を崩されて、危うい所をエルルが救ってくれた、今はソフィアが付いているが、姫様の担当になる者は注意してくれ、皆、エルルの食事が食べたくて、仕方ない様だが、美味しく食べて、今日一日頑張る様に、以上、」
執事長の挨拶が終わると、皆カウンターに集まり、エルルが、
「皆さん、おはようございます、今日から食事は、カウンター越しに、お渡しします、その方が皆さんに早く食事を出す事が出来ます、朝食は、ホイップクリームと、バターと、ハチミツをかけた、甘いパンケーキか、肉汁いっぱいのジュウシィー腸詰のホットドッグです、どちらにも美味しいスープが付いています、お昼も同じメニューになりますので、お好きな方を食べて下さいね、」
エルルの説明を聞いて、メイドさん達が、カウンターに殺到するが、エルルと、サムで次々と注文されたトレーを出して行く、メイドさん達は圧倒的ににパンケーキセットを選択している、メイドさん達に出し終わると、侍女長が、
「エルル、おはよう、昨晩皆にトイレの話しをしたら、今朝は大変な事になっちゃったわ、今日、御用商人に魔石を用意させるから、入り次第、早急に改装をお願いするわ、
で、私はパンケーキセットで、」
「了解です、侍女長、今日は、姫様の診察以外、基本的に、厨房にいます、のでいつでも魔石を持って来て貰えれば、直ぐに改装しますよ、」
侍女長は、頷くと大切そうにパンケーキのトレーを抱えて席に向かった、
「エルル、おはよう、昨晩は、お疲れ様、エルル、紹介するぞ、執事のジャンだ、」
「初めまして、ジャン先輩、エルル・ルコルです、」
と、エルルはロバートの横に立つ男に声をかける、男はしばらくエルルを見て惚けていたが、執事長に、
「ジャン、早く注文しろ、いつまでたっても、食べられないじゃないか!」
「えっ、あっ、すいません執事長、じゃ、ホットドッグセットで、あと、エルル君、食べながら話さないか?」
「はい、ホットドッグセットです、はい、良いですよジャン先輩、一緒に食事にしましょう、」
いつもならメイドさん達の話し声で賑わう朝の食堂が今日は静まりかえり、皆黙々とパンケーキを食べ、感動し、スープを飲んで、また感動している、イオさんなんて、パンケーキが無くなり、お皿に残ったホイップクリームを舐めようとして、アニー先輩達に止められてるよ、
エルルは、ジャンと同じテーブルで、ホットドッグを食べながら、
「僕の名前は、ジャン・アズビー、エルル君、君の事は父から、聞いていて、僕は君にずっと逢いたかったんだよ、あっ、父の名前は、ジルだよ、知っているよね、」
エルルは、驚き、
「ええっ、ジャン先輩、ジルおじさんの息子なの?、ジルおじさん、小さい頃から、親戚のおじさんみたいに、思ってたから、ジャン先輩は、従兄弟の兄ちゃんの様に感じますよ、」
「ははは、森の大賢者様に、お兄ちゃんと、言われると恥ずかしいな、僕はね、父にエルル君の元で働きたいと、お願いしていたのだけど、夢が叶ったよ、」
「ジャン先輩、森の大賢者って、何ですか?僕の事じゃ無いですよね、」
「父はずっと前から、森の大賢者ってよんでたよ、」
エルルは、あのオッサン、次会ったら光剣で斬る!必ず、斬る!
「ジャン先輩、二度と森の大賢者なんて言わないで下さいね、恥ずかし過ぎて、倒れちゃいますよ!」
ジャンは、笑いながら、
「わかったよ、エルル君、でも色々勉強させてね!エルル先生!」
エルルは膨れながら、
「わかりました、でも君付けは辞めてください、エルルでお願いします!」
「でも本当に美味しいよ、いつも父が自慢してたから、今度は自慢し返すよ、さあ、仕事に行って来るよ、エルルは今日は休みなんだって、」
「はい、お休みです、お仕事頑張って下さいね、」
メイドさん達も、名残惜しそうにトレーをカウンターに返し、各自の仕事に向かっていった。
ありがとうございました。